リチウム空気電池の実用化課題、電圧上昇の原因特定に成功蓄電・発電機器

物質・材料研究機構(NIMS)が次世代電池として期待されているリチウム空気電池の実用化課題の一つ、充電電圧の上昇原因の特定に成功したと発表。

» 2020年08月17日 07時00分 公開
[スマートジャパン]

 物質・材料研究機構(NIMS)は2020年8月12日、リチウム空気電池の実用化課題の一つである、充電電圧の上昇原因の特定に成功したと発表した。充電電圧は放電時に生成される過酸化リチウムの「結晶性」に強く依存し、過酸化リチウムの結晶性が高いほど充電電圧も高くなるという。

 リチウム空気電池は、正極活物質として空気中の酸素を、負極にはリチウム金属をそれぞれ用いる蓄電池。理論上のエネルギー密度が現行のリチウムイオン電池の数倍で、幅広い分野に適用できる次世代電池として期待されている。ただ、現状では充電電圧(過電圧)が上昇することによって副反応が誘発され、充放電サイクル寿命が短いという課題がある。しかし、充電電圧上昇の原因についてはこれまでほとんど明らかになっていなかった。

 研究グループでは今回、その原因を明らかにすべく、放電生成物である過酸化リチウム(Li2O2)の結晶性に着目し、充電電圧との関係を調べた。Li2O2の生成(放電反応)には、カーボン電極上での反応と電解液を介した反応(不均化反応)という2つの経路があるが、実験の結果、充電電圧の上昇は不均化反応による高結晶性Li2O2に由来することが分かったという。つまり、この反応による高結晶性Li2O2の生成を抑えられれば、充電電圧を下げることができる。

リチウム空気電池の放電過程(Li2O2生成)の模式図 出典:NIMS

 研究グループは今後、低結晶性のLi2O2を優先的に生成する手法を確立し、リチウム空気電池のサイクル寿命の伸延を目指す。さらに、NIMS-SoftBank先端技術開発センターで、リチウム空気電池の実用化研究を加速していくとしている。

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