未利用の温泉排熱で発電を可能に、ヤンマーが長野県で実証試験自然エネルギー

ヤンマーホールディングスのグループ会社であるヤンマーエネルギーシステムは、温泉廃熱を利用した小型のオーガニックランキンサイクル式発電機(ORC発電機)を開発し、試験機を長野県諏訪市のあやめ源湯へ設置した。

» 2020年08月28日 13時30分 公開
[スマートジャパン]

 ヤンマーエネルギーシステム(YES)は2020年8月、温泉廃熱を利用した小型のオーガニックランキンサイクル式発電機(ORC発電機)を開発し、試験機を長野県諏訪市のあやめ源湯へ設置したと発表した。同年8月4日より発電を開始しており、試験導入の実証期間は1年間である。

今回設置したオーガニックランキンサイクル式発電機 今回設置したオーガニックランキンサイクル式発電機 出典:ヤンマーホールディングス

 以前より諏訪市では、豊かな温泉資源を活用して家庭や共同浴場などへ温泉を給湯する事業を行っている。しかし、契約件数が年々減少傾向にあったことや、地域の資源を活用して地域への還元ができないかなど、温泉の新たな活用方法を模索していた。そうした中でYESの取り組みを知り、協議を重ねて、今回の温泉廃熱を活用した小型ORC発電の試験導入が実現した。

取り組みのイメージ 取り組みのイメージ 出典:ヤンマーホールディングス

 ORC発電機は、水よりも沸点の低い媒体を活用することで、低温の蒸気や熱水を発電に利用でき、温泉熱や地熱などの有効活用の手法として注目されてきた。発電時には、これまで未利用であった工場廃熱や温泉熱などを活用するので、化石燃料由来のエネルギーと異なりCO2が発生しないため、地球温暖化防止の観点からも非常に有用なシステムとされている。

 これまでもORC発電機は日本国内に限らず開発されてきたが、地熱活用など大規模なものが多いため、導入先が限られ、また個別の対応が必要となることから、コスト高などの課題があった。YESは、温泉廃熱を利用した10kW未満のパッケージ化された小型のORC発電機を開発した。

 ORC発電機は、定格出力9.0kW(キロワット、熱源90℃、冷却源20℃の場合)、大きさ:幅807×2009×1675mmで、比較的低温(70〜95℃程度)の廃熱から発電ができる。熱回収から系統連系に必要な機器をコンパクトに組み込んだパッケージ発電機で、配管・配線接続のみで設置可能である。

 パッケージ化することで施工性の向上や複数台設置が簡易にでき、案件ごとに最適な容量を構成できるメリットがある。YESでは、日本国内には温泉を含め工場などでにもある小規模な熱源を対象に、社会的・経済的に最適なソリューションをユーザーに提供していきたいとしている。

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