ソーラーシェアリングはなぜ大きく普及しないのか、その理由を考える【前編】ソーラーシェアリング入門(36)(1/2 ページ)

「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)」について解説する本連載。今回は筆者によく寄せられる「ソーラーシェアリングはなぜ大きく普及しないのか?」というテーマについて、さまざまな側面から考察します。

» 2020年09月23日 07時00分 公開

 ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)に関する取材や、講演の際の質問で多く聞かれるのが、「ソーラーシェアリングはなぜ大きく普及しないのか?」です。ソーラーシェアリングによる再生可能エネルギー導入立地としての農地のポテンシャルや、地上設置型の太陽光発電と比べた事業優位性、農業と太陽光発電事業の共生による地域社会や経済への貢献などさまざまなメリットを挙げていくと、やはり皆さんがこの疑問にたどり着きます。

 そもそもソーラーシェアリングの認知度が低いという根本的な懸念は拭えませんが、業界メディアの記事やメーカー・EPCのWebサイトを見ても、ソーラーシェアリングに対して言及される機会の多さは3年前と比べれば隔世の感があります。

 今回は、ソーラーシェアリングの飛躍的な普及に欠けているものが、一体何なのかを考えていきます。

事業コストは確実に下がってきた

 屋根置きや地上設置型の太陽光発電と比べて、ソーラーシェアリングの設置コストが高いと言う点は、最初に普及の課題として思いつくものでしょう。確かに、多くの農作物に適した遮光率を考慮すれば、地上設置型と比べて同じ面積に設置できる太陽光パネルの枚数は減りますし、農作業の空間を確保するために架台の高さを増したり、その分だけ支柱や基礎を強固にしたりする手間は、ソーラーシェアリングのコスト面でのデメリットになります。

 一方で、FIT制度における売電単価が下がる、あるいはNon-FITによる事業も模索される中で、ソーラーシェアリングならではのコスト削減要素もあります。土地に関するコストが農地を利用するために低く抑えられること、除草作業など地上設置型のO&Mで大きなコストを占める作業が農作業で代替されるために必要ないこと、荒廃農地でない限り樹木の伐採や土地の造成などが不要であることといった点は、発電設備の本体工事費だけでなく事業期間全体の収支を考える中で、ソーラーシェアリングにとって優位なポイントになります。

農業の作業性や生産性の確保と設備コスト低減の両立は引き続きの課題

 資材の面でも、太陽光パネルやパワコンの価格は世界的な太陽光発電の導入加速で下がり続けています。FIT制度導入当初から存在する資材価格のジャパンプレミアムや、日本市場が縮小することによる資材価格の下げ止まりがあるにしても、全体的な価格の低下傾向はソーラーシェアリングにも有利に働きます。こういった点を考慮すると、少なくとも地上設置型とソーラーシェアリングの間では事業期間の収支まで含めたコスト差は逆転しつつあると言えます。

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