近づく“再エネ争奪戦時代”の到来、高まるソーラーシェアリングへの期待とはソーラーシェアリング入門(42)(1/2 ページ)

ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)について解説する本連載。今回は筆者が出席した環境省の「国・地方脱炭素実現会議」で、小泉環境大臣へ行ったプレゼンテーションの内容を紹介するとともに、国内の再エネ需要と太陽光・ソーラーシェアリングの展望について考察します。

» 2021年02月24日 07時00分 公開

 去る2021年2月16日に、環境省が事務局を担い小泉環境大臣が議長を務める「第1回国・地方脱炭素実現会議ヒアリング」が開催され、地域における再生可能エネルギーの持続的拡大に向けた課題と方策について、事業者への意見聴取が行われました。私もこのヒアリングに招聘(しょうへい)され、事業者代表としてソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)に関するプレゼンテーションを行いました。当日の議事や資料は内閣府のページで公開されています。

 ここで私がまず訴えたのは、今後の2030年に向けた再生可能エネルギー導入目標を引き上げていく中で、太陽光発電が果たす役割の重要性です。2030年目標の引き上げについてはさまざまな立場から提言が行われています。その上で、仮にエネルギーミックスで設定された目標値の2倍にあたる発電電力量の44〜48%を再生可能エネルギーとしていく場合、風力発電・中小水力発電・地熱発電・バイオマス発電を最大限導入した上で、太陽光発電の2億kW(キロワット)以上の導入が必要になります。

国・地方脱炭素実現会議におけるヒアリングで筆者が提示した資料

 これは、FIT制度によって急増したと表現される現在の導入量の更に4倍という水準になることは、前回の記事でも言及しました。そして、その大量導入の要請に応じられるポテンシャルを有するのがソーラーシェアリングであると主張しました。

日本国内では供給量不足による“再エネ争奪戦”の時代へ

 こうした現実的な政策目標の議論を提起していく背景には、企業活動や自治体などにおける再生可能エネルギー確保の要求の高まりもあります。直近では、ヤフーが2023年度までに再エネ100%の達成を宣言したり、北九州市が2025年度までに約2000カ所ある公共施設の電気を全て再エネに切り替えたりするといった動きがありました。

 こうした動きの中で、RE100の2020年版の年次報告書「RE100 Annual Progress and Insights Report 2020」では、日本に対して、再生可能エネルギーの調達コストが高く、証書による調達量も限度があると指摘しています。また、RE100加盟企業の4分の3が2030年を“再エネ100%”の達成年次としている中で、日本企業では未だに2040〜2050年を達成年次に掲げている企業が多く見られ、この前倒しが進むのかも注目すべきです。こうした再生可能エネルギーを巡る企業動向の変化については、昨年の年始に公開した下記の記事でも言及していました。

 昨年からのデータのアップデートとして、国内における再生可能エネルギー発電電力量は、総合エネルギー統計2019年度版によると1853億kWhです。これに対して、企業活動などで消費される電力は6600億kWh。つまり、国内の全ての再生可能エネルギー発電を足し合わせても、企業活動における電力需要の28%しか満たすことができません。実際には家庭部門や運輸部門で消費される再生可能エネルギー電力もあるため、企業活動に充当できる比率はさらに下がります。

 日本国内で消費する再生可能エネルギーは国内で生産するほかありませんが、再生可能エネルギー発電の適地は既にFIT開始段階から激しい争奪戦が行われてきました。そして、これからさらに企業活動における再生可能エネルギー比率を引き上げる動きが高まっていくことが予想され、再エネ争奪戦時代が到来すると考えられます。となれば、今すぐにでも再生可能エネルギー電源の自主開発に乗り出さなければ、後発組となってしまった企業は、将来的により高いエネルギー調達コストを支払うことになるでしょう。

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