求められるのは“ポストFIT”の事業構想、2020年にソーラーシェアリングは新たなステージへソーラーシェアリング入門(24)(1/2 ページ)

太陽光発電と農業を両立する手法として、近年大きな期待と注目を集めている「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)」について解説する本連載。今回はFITの抜本改革など、事業環境のさらなる変化が見込まれる2020年のソーラーシェアリング市場の見通しについて展望します。

» 2020年01月14日 07時00分 公開

2020年、太陽光発電事業全体は著しい停滞期に

 本稿の前編となる前回の原稿では、2019年のソーラーシェアリング市場について振り返りました。

 さて、2020年はソーラーシェアリングにとってどのような年になるでしょうか。地域活用要件枠によって、低圧規模のソーラーシェアリングにはFITによる全量売電枠が残りますが、高圧規模では入札対象の拡大は間違いなく進みます。ともすれば100kW以上でFITを利用するために、ソーラーシェアリング事業においても入札への参加が必要になるかも知れません。

 2019年度には500kW以上の太陽光発電へと対象枠が広がった入札制度ですが、2019年11月に発覚した入札システムの情報漏洩問題によってその信頼性が大きく揺らぎました。さらに、これまでの入札で繰り返された「低額での落札者が悉く事業化を断念して撤退する」という状況を踏まえると、入札制度は調達価格引き下げの理由付けにはなってきました。しかし、入札に参加する事業件数・規模を見ると、500kWまで対象が広がった2019年の第4回入札では、入札が71件・266MW、落札が63件・195MWにとどまっています。

 このように事業参入の間口は狭め続けられており、もし経済産業省・資源エネルギー庁が再生可能エネルギーの普及拡大をFIT制度の目的としているのであれば、入札制度自体の見直しが図られるべき惨状です。

 2021年度以降はFITからFIPへの移行が議論されていますが、市場での取引を前提とするFIPを導入するには電力取引市場の未整備が大きな壁となって立ちはだかります。現状、FITを通さない形でオープンに太陽光発電の電気を購入するという小売電気事業者は、皆無です。そのような事業者を増やすための制度設計が間に合っていません。

 そうなると、まずはFITの先として位置づけられているFIPを含め、建前であっても再生可能エネルギーの普及拡大のための政策を続けるとするのであれば、当初数年は全量FITとFIPを併用するしかないでしょう。そうでなければ、制度の先行きが読めないことで事業開発・投資がさらに停滞し、太陽光発電事業の開発に断層のような空白の数年間が刻まれることになるはずです。

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