太陽光発電と農業を両立する手法として、近年大きな期待と注目を集めている「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)」について解説する本連載。今回は2019年のソーラーシェアリング業界を振り返りつつ、その中で見えてきた課題について解説します。
新年明けましておめでとうございます。令和二年そして2020年の正月を迎え、2030年という大きな区切りの時に向けて、再生可能エネルギー業界がさらなる飛躍を遂げる10年が始まりました。今回は新年号として、まず前編となる本稿で2019年のソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)業界を振り返り、それを踏まえた上で、後編では2020年の展望をまとめたいと思います。
2019年も、全国各地が大きな自然災害に見舞われた1年でした。台風15号による風害、台風19号と21号による豪雨災害は、農業を始めとする多くの産業に被害をもたらし、ソーラーシェアリングもその例外ではありません。
本連載のソーラーシェアリングの安全対策に関する記事でも取り上げましたが、私が自身で運営する千葉市大木戸アグリ・エナジー1号機(千葉市緑区)は、設計コンセプトの通り台風15号の猛烈な風でも被害はなかったものの、あの台風直撃の夜は寝付けなかったのを覚えています。
台風の通過後には、千葉県・茨城県を中心に複数のソーラーシェアリング設備が全半壊したという情報や、設備再建の相談が持ち込まれました。これを受けて、日本初となる「稼働済みソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)事業の相談サービス」を千葉エコで始めるに至りましたが、その背景には参入事業者が増えることによるソーラーシェアリングの特性を踏まえない設備の増加があります。
設備の導入コストを気にしすぎるあまり、特に基礎・架台や工事を相見積して、安いというだけでメーカーを選んでしまうこと、ソーラーシェアリングの施工経験が少ない工事会社を選んでしまうことが、今回の台風に際しての被害が増えた背景にあると考えています。特に、主流となっているアルミ架台では、用いる素材であるアルミの量が、ソーラーシェアリングでは単純に野立てより増えるのは避けられません。その中で「他社より安い」ということは、どこかで使用する素材の量を減らしている場合がほとんどです。それは結果として設備の安全性に影響が及び、災害時に露呈することで導入コストの差額以上の被害が生じることになってしまいます。
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