求められるのは“ポストFIT”の事業構想、2020年にソーラーシェアリングは新たなステージへソーラーシェアリング入門(24)(2/2 ページ)

» 2020年01月14日 07時00分 公開
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FIT後のソーラーシェアリング拡大に向けた助走期間へ

 これらの支援制度の議論を横目に、制度リスクの高いFIT/FIPを用いない事業モデルの確立が進められています。それは、「オンサイト/オフサイトPPAモデル」の事例構築です。農地を潰して都市化が進んできた我が国の土地利用の歴史を鑑みれば、大都市近郊にすらまとまった農地が残存しています。そこから、配電線レベルでの送電による需給近接型のソーラーシェアリング開発は、自ら再生可能エネルギーを確保することの難しい都市部でのエネルギー確保に必須となります。さらにオフサイト型では託送ではなく自営線での供給モデルが認められることで、BCP(事業継続計画)の向上にも資することになるでしょう。ただ、ここもまた制度の整備が追いついていないのが現状です。

 この視点から、2020年のソーラーシェアリングは誰が牽引(けんいん)するのかを考えていくと、その候補の一つとしてRE100に取り組む大企業の参入が視野に入ります。年末にプレスリリースを出した清水建設の参入は、都市近郊型ソーラーシェアリングに向けた第一段階のアクションです。

 RE100の2019年の年次報告書を見ると、RE100に加盟している企業の75%が2030年までに再生可能エネルギー100%目標を掲げており、早晩それより低い目標となっている日本から参加している企業も、国際競争の中で同等の目標を掲げる必要に迫られるでしょう。そうなれば、国内での再生可能エネルギー電源確保のニーズが高まります。しかし、現在の我が国における再生可能エネルギー発電電力量は、産業部門の電力需要の3割相当しかありません。当然、産業部門以外も再生可能エネルギー電源を使っていくとなれば、RE100達成のためには自ら再生可能エネルギー発電設備に投資していく必要が生まれます。そして、最も電源開発におけるリードタイムが短いのが太陽光発電であり、まとまった土地が確保しやすいことでボリュームを稼げるソーラーシェアリングが最有力の電源だと考えられるのです。

 世界レベルで再生可能エネルギーへの転換と大量導入が進む中で、そこに速やかに適応していく必要のある大企業だけでなく、中小企業レベルでも「RE Action」といった再エネ100%宣言をする企業が増えてきています。制度リスクの固まりとなったFITの利用に固執することなく、第三者所有モデルを含むPPAモデルによって、自ら一定のリスクを取った電源確保に踏み出さなければ、必要な電気を確保できなくなっていくでしょう。

 農業者の所得向上や耕作放棄地の再生という視点からスタートしたソーラーシェアリングは、再生可能エネルギーが主力電源となる時代へと変わっていく中で、その中心を担うポジションを狙える立場になってきました。2020年はソーラーシェアリングにとって新たなステージに踏み出す始まりの年になる、そう思わせる1年が幕を開けます。

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