旧来から、太陽光発電は天候に左右されることを理由にエネルギー供給のメインストリームにはなりえないといわれてきました。しかし、まず再生可能エネルギーの絶対量を確保していくことが必要になってきた現在では、太陽光発電を大量に導入した上で、そのエネルギーの利用タイミングをずらすような仕組みを取り入れる――という流れにシフトしていくでしょう。そして、太陽光発電のさらなる導入ポテンシャルをどこに求めるのかを考えた際に、農地を活用するソーラーシェアリングへの注目が以前よりもさらに高まっているのを感じます。
冒頭の国・地方脱炭素実現会議ヒアリングでも言及しましたが、日本国内の大都市近郊には必ず農地/農村が広がっています。東京・千葉・埼玉・神奈川の一都三県だけで約22万haの農地があり、関東の一都六県では約58万haです。もしこのうち10%にソーラーシェアリングが導入されれば、その出力規模は5000万kW以上になり、年間の発電電力量は500〜600億kWhが見込めます。屋根置きなどの太陽光発電を徹底的に導入した上で、これだけの再生可能エネルギーを都市近郊で生産できるのは、ソーラーシェアリングだけといえるでしょう。
このポテンシャルを生かしていくためには、まず2030年に向けて個別の再生可能エネルギー源をどれだけ導入していくのかという目標を政府が定め、さらに地方自治体が地域内での地球温暖化対策計画に再生可能エネルギーの導入目標を定量的に設定していくことが必要です。また、FIT導入後に太陽光発電の野放図な開発が地域とどのようなトラブルを起こしてきたのかも詳細に分析し、再生可能エネルギーの導入を大義に掲げた無軌道な開発を招かないようなルール作りも必須となります。規律無き太陽光発電の開発が、自然環境を破壊し地域社会との軋轢(あつれき)を招いていることを、私たちは決して忘れるべきではありません。
ソーラーシェアリングは農業との共存を前提とすることで農地を活用する事業であり、エネルギーと食料という社会に不可欠な資源を確実に自給し、持続的に生産していく仕組みを地域と共に作ることが大切です。
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