5%の農地に再エネ2000億kWhのポテンシャル、ソーラーシェアリング普及に向けた課題とは?ソーラーシェアリング入門(46)(2/3 ページ)

» 2021年05月13日 07時00分 公開

ソーラーシェアリングの普及へ「克服すべき課題」とは?

 ここまでのようなソーラーシェアリングへの取り組みの必要性を、今年に入ってから各省庁の委員会などでプレゼンしてきましたが、多く問われてきたのは「なぜこれまでソーラーシェアリングは普及してこなかったのか?」という点です。この原因には、今後の普及拡大を図る上でも克服しなければならない課題を含んでいますが、系統制約のような再生可能エネルギー全般の共通課題以外で、ここでは大きく3点を挙げていきます。

 まず挙げられるのは「国策としての研究開発に取り組まれてこなかったこと」です。FIT制度とほぼ同時に普及が始まった国内でのソーラーシェアリングですが、取り組みとしては各地での個々の事業者による取り組みからのボトムアップで広がってきたこともあり、体系的な設備や農業の技術研究が行われてきませんでした。そのため、「農業生産と発電事業が本当に両立できるのか」という懸念に応えるための実績を現場で積み上げていかねばならず、その成果と理解と認知を得ることに大きな労力を費やしてきました。

韓国では4年前から全国の農業試験場でソーラーシェアリングの実証研究が進む

 国策として農業技術・発電設備の研究を行い、その結果を踏まえた普及政策をとることが出来ていればもっと国内での普及は容易になり、国際的な広がりに際しても先駆者としての立場をしっかりと固めることが出来ていたでしょう。既にこの分野の研究では韓国やドイツなどに大きく後れを取り始めており、すみやかな研究開発事業の実施が必要です。

FITがあっても普及しなかった理由

 次に挙げられるのが、よく聞かれることも多い「FIT制度があっても広がってこなかったのは何故か」という点です。これは、屋根置きや野立ての太陽光発電と異なり、ソーラーシェアリングは農業の暦にあわせて事業を考えていく必要があります。未活用の屋根や空き地があるから、そこに太陽光パネルを設置しよう――というほどに簡単な話ではなく、昨今話題になっている荒廃農地であっても、そこで農業生産を回復していくことを考えればしっかりとした農業経営計画が必要になります。

 結果として、毎年猫の目のように制度の運用が変わっていき、翌年度の調達価格や制度変更の内容が年度末まで判明しないような事業用太陽光発電向けのFIT制度では、ソーラーシェアリングの特性、ひいては地域と共生する再生可能エネルギー事業の拡大に資することができませんでした。

 今後、2030年に向けての再生可能エネルギーの大量導入を果たしていくためには、これまでのFIT制度における成果と課題の総括を行った上で、現在進められているFIP制度の設計見直しも含めたゼロからの政策議論が必須です。過去10年間を大きく上回る再生可能エネルギーの新設がこれから必要になる以上、そうした成果を目標としていない現在のFIT及びFIPの制度議論を惰性で続けるべきではありません。

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