5%の農地に再エネ2000億kWhのポテンシャル、ソーラーシェアリング普及に向けた課題とは?ソーラーシェアリング入門(46)(1/3 ページ)

ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)について解説する本連載。今回は日本の新たな温室効果ガス削減目標の達成に向け、ソーラーシェアリングが果たす役割とそのポテンシャル、そして今後の普及に向けた課題について解説します。

» 2021年05月13日 07時00分 公開

 2021年4月22日に菅総理大臣が新たな気候変動対策目標を公表し、日本は2030年時点で2013年度比46%の温室効果ガス削減を目指すこととなりました。その達成に向けて翌23日には梶山経済産業大臣が、2030年の電源構成で再生可能エネルギーと原子力を5割以上に増やしていく考えを示したほか、大量導入可能な再生可能エネルギー電源として太陽光発電に注目する発言も出ています。

 前回は2030年に向けた電源構成の議論と再生可能エネルギー比率について整理しました。今回はその中でソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)の果たす役割について整理していきます。

ソーラーシェアリングのポテンシャルを改めて評価する

 ソーラーシェアリングのポテンシャルは国内の農地面積が上限ということになりますが、2020年時点で国内の耕作地面積は約440万haあります。これに荒廃農地約28万haが加わります。下記の図は、3月12日に私が登壇した再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会(第27回)でのプレゼン資料ですが、一つの目安として国内農地の5%と10%を活用した場合の導入量を示しました。

ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)の導入可能性量 

 国内農地の5%(22万ha)をソーラーシェアリングに利用すれば2000億kWh、10%(44万ha)を利用すれば国内最終エネルギー消費の10%に相当する太陽光発電の発電量を獲得できるという試算です。

 実際には太陽光発電システム全体の性能向上によって必要な面積はより少なくなると見込んでいますが、2030年の温室効果ガス削減目標を達成するためには、前回触れたASPEnによる提言書にも記載した通り、約2%(10万ha)の農地を活用して1000億kWhの発電電力量を確保していくことが一つの目安になると考えています。概ね農地1haあたり年間100万kWhを生産するという前提で、水田も畑も活用していくというシナリオです。

 現時点では+10%の再生可能エネルギー導入量拡大という視点から論じていますが、この先2050年に向けてより一層のエネルギー転換を図っていくとなれば、このポテンシャルを活用していくための政策を今から準備していく必要があります。

なぜソーラーシェアリングなのか?

 ソーラーシェアリングによって2030年に向けた再生可能エネルギー導入拡大を目指すべきと考える理由は、太陽光発電の事業化に要するリードタイムの短さや、単に導入適地として広大なポテンシャルがあるという現実性だけではありません。「地域共生型再エネ」という用語を、既に経済産業省・資源エネルギー庁が少しズレた意味合いで用いてしまっていますが、何より重視されるべきは「再生可能エネルギーの地域との共生」です。

 再生可能エネルギーは自然資源を利用するため、その賦存量は都市部よりも農山漁村の方が豊かです。ソーラーシェアリングは日照条件が良い農地という環境を利用することで再生可能エネルギー生産のポテンシャルを広げるものですが、大前提として農業と共存し、私たちが生きるために欠かせない食料生産に貢献していくことが重要です。単にエネルギー生産による所得の向上を図るだけでなく、輸入資源である化石燃料がなければ成り立たない状況にある国内農業を、農地で生み出した再生可能エネルギーによって脱炭素化を進め、農業生産に不可欠なエネルギーを確保することで真の食料自給を達成することにもつながっていきます。

再生可能エネルギーは自然資源を活用するものであり、自然との共存は欠かせない

 こうした再生可能エネルギーの生産による恩恵を農村・農業者が受けることで、エネルギーと食料という社会に不可欠な資源を持続的に生産する仕組みがより強固になることから、再生可能エネルギー事業に対して社会的な投資を拡大していく意義がより一層大きくなります。この観点は、経済産業省・資源エネルギー庁のエネルギー政策で用いられる「地域共生型再エネ」には残念ながらまだ取り入れられていませんが、再生可能エネルギーの更なる普及拡大を目指す上では避けて通れない視点です。

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