ソーラーシェアリングの成功に欠かせない、販売戦略と次世代育成の重要性とは?ソーラーシェアリング入門(48)(1/2 ページ)

ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)について解説する本連載。今回はソーラーシェアリングという現場を生かした農産物の販売や、次世代育成などの取り組みについて紹介します。

» 2021年06月28日 07時00分 公開
[スマートジャパン]

 前回の記事では、久々にソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)設備下での農業生産の様子を取り上げました。ソーラーシェアリングの取り組み事例は増えてきましたが、その下での農業の実態はまだまだ知られていません。後編となる今回は、ソーラーシェアリングという現場を生かした農産物の販売や、次世代育成などの取り組みについて紹介します。

ソーラーシェアリングで生産した野菜の出荷と販売の工夫

 農業は作物をただ生産すれば良いというものではなく、それを販路に乗せることで、適切な収益を得る必要があります。意外とこの点が抜け落ちていて、ソーラーシェアリングをきかけに農業参入を果たしたものの、販路をしっかりと整えていなかったことで悲惨な目に遭う事業を少なからず目にしてきました。

 私たちが自社で運営するソーラーシェアリングである千葉市大木戸アグリ・エナジー1号機の農場では、昨年から野菜の多品種栽培に取り組んでいることは前回紹介しましたが、販路も徐々に多様化を見せています。当初はニンニクのみの栽培に特化し、販路も業務加工用を主として出荷していましたが、多品種栽培に移行してからは地元のさまざまなチャンネルを使って農産物の販売が出来るようになりました。

昨年から栽培を始めたリーフレタス

 私たちの農場は政令指定都市である千葉市内に位置し、半径10km圏に約20万人が居住しています。この立地を生かして、ショッピングモールなどにある直売広場や道の駅へ出荷しているほか、関係値のある店舗にも農産物を並べてもらっています。こうすることで、曜日や時間帯、季節によってそれぞれの場所で異なる売れ行きの傾向が見えてくるため、作付や出荷のタイミングを調整したり、販売方法を工夫したりといったアクションが取れるようになってきました。

市原みつばち牧場minishop(市原市)での販売風景
高秀牧場ミルク工房(いすみ市)での販売風景

 私たちは単に農産物を販売するというだけでなく、ソーラーシェアリングを含めた取り組みそのものを知ってもらいたいという思いもあります。そのためには販売店の協力も不可欠で、なかでも普段からお客さんと店員さんのコミュニケーションがある店舗の方が、取り組みの背景までしっかりと伝えてもらうことが出来ます。こういったアクションは、写真に挙げたような地域に根ざした小規模な店舗の方が得意としていて、ショッピングモールの直売広場や道の駅では来店客数こそ多いものの、レイアウトなどの制約が大きく、どうしても他の商品に埋もれてしまう――というようなノウハウもここ1年ほどで分かってきました。

 ソーラーシェアリングの世界的な広がりを目にすると、いずれはソーラーシェアリングで栽培された野菜というのも当たり前になる、言い換えれば特別な価値を持つ必要がなくなる時代が来ると思いますが、今はこれがどういった取り組みなのか、そこにどんな意義が生まれるのかを伝えることにも注力していきたいと考えています。

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