災害時に命を守る大きな役割を果たす防災施設。非常時を想定し、太陽光発電や蓄電池などを導入したいが、コストが課題――そうした際に活用したいのが、国の助成事業だ。パナソニックが手掛けた群馬県吾妻郡の助成事業活用例を紹介する。
太陽光パネルや蓄電池、ガスヒートポンプ(GHP)などで構成される環境対応の省エネ設備は、運用コストを低減できる反面、導入時にはそれなりの費用が必要だ。しかし、定められた基準を満たす設備とすることで、公的な資金補助を受けられる場合がある。
例えば、環境省の「地域の防災・減災と低炭素化を同時実現する自立・分散型エネルギー設備等導入推進事業」では、温室効果ガスの排出抑制と災害時のエネルギー供給に寄与する設備の導入・更新を支援している。公共/民間を問わず、災害時の避難所などに利用される施設が対象で、導入費用に対し最大75%の補助を受けることが可能だ。
「防災リニューアル事業」として、こうした助成事業を活用し、防災施設に向けてエネルギー設備の導入・更新に注力しているのがパナソニックだ。同社では、群馬県吾妻(あがつま)郡の6町村の複数施設において、防災設備の更新を手掛けた。
群馬県吾妻郡は、群馬県の西部に位置する。近隣には草津白根山や浅間山という現在も活動中の火山が2つもある土地柄ということもあり、噴火災害に対する関心は高い。その吾妻郡を2019年に台風19号が直撃した。
台風19号によって、吾妻郡は甚大なる被害を受けた。大雨によって多くの箇所で土砂崩れが発生し、生活の場に土砂や大石が流れ込んだ。この土砂によって、多くの建物が被害を受けた。国道の橋が流されたところもある。現地には、現在でも復旧工事が続けられている箇所が残る。
西吾妻福祉病院は、長野原町、嬬恋村、草津町、中之条町の4町村が出資する公立病院だ。ヘリポートを備えた救急対応の総合病院として、365日24時間対応で運営されている。
病院の開設は平成14年(2002年)。すでに開設から少なからぬ時間が経過し、空調を始めとしたエネルギー関連の設備が更新時期に差し掛かっていた。
地域の医療を担う総合病院ということもあり、同病院のエネルギー設備は規模が大きい。今回、パナソニックの防災対策リニューアル事業によって、368.5kWの太陽光発電と416kWhの蓄電池、15系統の空調設備などが導入された。これらに関する総事業費は約6億6000万円。これに対して、約4億5000円の助成が得られた。つまり、2億1000万円ほどの負担で設備を一新できたことになる。
西吾妻福祉業員組合の事務局長である木村泰志氏は、「非常に優良かつ大規模な設備が補助金のおかげで非常に安価に施工できた。よくできた事業だと思っている」と評価している。
エネルギー施設の更新によって、運用時のエネルギーコストは大幅に削減できることになる。今回の事業では、年間の電気料金に関して従来の約2900万円から約1800万円とすることが目標に定められた。削減できた運用コストは設備の導入費に充当できる。これによって、徐々に導入費を償却できることになる。
なお、導入された太陽光発電設備は、天気が良ければ病院で電気を使いながらでも、午前中に蓄電池を満充電できるほどの発電量だという。また、余裕のある蓄電能力は、停電時にも安心をもたらす。病院のある地域では、夏の雷、冬の雪によって停電が発生することがあるという。今回、蓄電池を導入したことで、停電の影響から開放されることになる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.