超伝導で送電ロスを95%以上削減、プラント向けの次世代省エネ技術に成果省エネ機器(2/2 ページ)

» 2021年12月07日 13時00分 公開
[スマートジャパン]
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送電ロスを95%削減、大きな導入ポテンシャルも

 実証試験ではプラントの既存設備を利用する必要があったため、構内の既設ラック(高さ5メートル)上にケーブルを設置するなど、構内経路に沿って敷設を行った。そのため、4カ所の屈曲部(90度、曲げ半径1.5メートル)を設ける必要があったが、ケーブルの柔軟性により問題なく敷設することができたという。なお、コンパクトなケーブルでは屈曲部などで液体窒素の流路が狭くなるが、今回のシステムでは400メートルの長距離でも問題なく液体窒素を流すことができ、複雑なプラントレイアウトにも対応できることを確認したとしている。

BASFジャパン戸塚工場に敷設した三相同軸型超電導ケーブルシステム 出所:昭和電線ケーブルシステム

 実証試験では約1年間にわたり無事故で電力供給を行い、盛夏期でも安定した液体窒素の循環を確認できたという。従来の液体窒素ポンプは数カ月に一度の分解整備を必要とするが、今回開発したポンプは約1年間、メンテナンスフリーによる運転を達成。これによりポンプのメンテナンスをプラントの定期点検に合わせて実施できることになり、高い実用性が証明できたとしている。無人監視システムの有効性も確認できたという。

 ケーブルや終端・中間接続部などの部品のコンパクト化による熱侵入量の低減およびプラント内の冷熱を活用することによる省エネルギー効果について、ほぼ設計値通りの結果が得らたという。実証試験での結果を基に長さ1000メートルの超電導ケーブルと従来のケーブルに3000Aの三相交流電流を通電して1年間に生じる送電損失を比較したところ、今回の超電導ケーブルシステムへの置き換えにより、従来ケーブルで発生する電力損失量を95%削減できるめどがたったとしている。

 プロジェクトでは、今回のシステムをプラントに適用する際の省エネ効果も試算した。液体窒素を利用するプラントで30MWの電力を利用する今回のシステムを導入した場合、年間省エネルギー量は原油換算で約110kL、初期投資は約8年で回収できるという。30MW以上の電力を利用するプラントは420回線(約190事業所)あり、大きな導入ポテンシャルがあるとしている。

開発した三相同軸型超電導ケーブルシステムがターゲットとする市場 出所:昭和電線ケーブルシステム

 今後プロジェクトでは、システムの実用化に向けて引き続き取り組むとしている。

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