金融視点で考えるソーラーシェアリングの現状と課題、「融資と保険」の最新動向ソーラーシェアリング入門(54)(1/2 ページ)

「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)」について解説する本連載。今回は前回に引き続き、農林水産省で開催されている有識者会議の内容について解説します。テーマはソーラーシェアリングにおける「融資と保険」です。

» 2022年04月06日 07時00分 公開

 前回に引き続き、今回も農林水産省の「今後の望ましい営農型太陽光発電のあり方を検討する有識者会議」について取り上げていきます。2022年3月10日に第2回の有識者会議が開催され、個別テーマとして融資・保険、そして今後予想される営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)の動きと検討すべき課題案について議論が行われました。まずは、融資と保険について見ていきましょう。

営農型太陽光発電に対する融資の状況

 まず融資と保険について、有識者会議事務局から各所へのヒアリング結果が報告されました。そのなかで、特に融資については金融機関における審査の目線などが明らかになりました。主に低圧規模を軸にした融資での目線ですが、発電事業の収支に加えて営農の適切な実施可能性、設備に対する保険やメンテナンス、担保の取り方などについて考え方が示されています。

有識者会議で公表されたヒヤリング結果の概要(その1) 出典:第2回有識者会議 事務局資料より

 営農型太陽光発電に対する融資では、発電事業者と農業者が異なる場合に事業への責任分担の目線から、融資のハードルが上がる傾向に。その一方で、発電事業も農業も同一事業者が行う場合には、そこが比較的クリアになると考えられてきましたが、農業者が発電事業を行う場合だと金融与信力の問題がある点、発電事業と農業の収支バランスやキャッシュフロー(CF)をどのように評価すべきかなど、現場での試行錯誤の様子がうかがえます。

 実際に融資を行っている金融機関の例も、従来の農林水産省の営農型太陽光発電ガイドブックよりも詳細に整理・公開されました。やはり日本政策金融公庫による融資が幅広く対応しているほか、地方銀行・信用金庫・信用組合それぞれの実績機関名称が明らかになっています。また、JAバンクの融資実績も徐々に広がってきているようです。

有識者会議で公表されたヒヤリング結果の概要(その2) 出典:第2回有識者会議 事務局資料より

 各地で先行する金融機関の融資が前例となって、徐々に融資事例が広がりを見せていることがこれらの情報から明らかになってきたとともに、普及当初から課題となっている営農継続リスクと一時転用許可の取消または更新不許可リスクは、引き続き金融機関サイドの懸念材料となっています。

 一時転用許可の更新については、昨年の再エネタスクフォースでも取り上げられ、農林水産省から原則として営農が適切に行われていれば再許可が得られるものである旨を、金融機関に周知することとされました。そもそも地方銀行や信用金庫、信用組合などでは農業経営の評価を農業への融資経験がなく十分にできないということも背景にあるほか、一時転用許可における農業生産への判断基準が地域によって違いすぎることも課題であり、これらについては都道府県単位での基準明確化が必要になるでしょう。

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