激動の市場変化を受けLooopが新方針、家庭向け電気料金は最大19.7%の値上げに電力供給サービス(1/2 ページ)

Looopがエネルギー資源価格の高騰など市場環境の変化を受けて、電気料金の値上げを含む今後の事業方針について発表。家庭向けの電気料金プランは、エリアごとに5.6〜19.7%の幅で値上げを実施する。

» 2022年05月10日 07時00分 公開
[廣町公則スマートジャパン]

 Looopは2022年4月28日、エネルギー資源価格の高騰など市場環境の変化を受けて、電気料金の値上げを含む今後の事業方針について発表した。同社は、これまでも再生可能エネルギーを「創る・コントロールする・届ける」を一気通貫で行うことを強みとして再エネ事業を展開してきたが、今回改めて「再エネ普及へ向けた道筋を提示し、自らがロールモデルとなること」を表明した。

 新しい事業方針では、「再エネの発電所を増やし、コントロールし、最大限に届ける電力会社となることで、日本のエネルギー自給率の向上とエネルギーコストの低減に向けて邁進する」と宣言し、そのためのステップに次の4項目を掲げた。

1.市場の再定義とサービス再設計

 「Looopでんき」の価格を見直し、再エネ設備導入の可能性の高い、一戸建てや小規模ビジネス事業者を中心に競争力のある価格設定とする(新料金については後述)。

2.再エネ電源確保と技術投資

 太陽光や風力をはじめとした自社発電所の開発、産業用・住宅用屋根置き太陽光発電の普及を加速させ、分散型エネルギーマネジメントシステム「エネプラザ」の拡張やエネルギーマネジメント技術の拡充によって、再エネ電源を日本各地に普及させる。

3.再エネ供給の加速

 確保した再エネ電源を活用してサービスを拡充し、顧客に再エネを届けることがスタンダードとなることを目指す。

4.技術革新

 再エネ拡大に向けた未来の技術開発に取り組む。

“再エネ電力宣言”

Looop代表取締役社長の中村創一郎氏

 Looop代表取締役社長の中村創一郎氏は、新しい事業方針を“再エネ電力宣言”と称し、次のように述べている。

 「エネルギー自給率が著しく低い日本では、自然災害が起こる度に停電が心配されています。そして年々自然災害は増える傾向にあります。この状態のまま次の世代に引き継いでよいのか、一度立ち止まって考えるべきではないでしょうか。小さな島国であり、天然資源に乏しい日本でエネルギーを自給しようと思うと、現状の最善の選択肢は再エネであると私たちは考えます。現在、日本の電源構成のうち、再エネが占める割合はわずか10%程度です。ここから当社の技術を駆使して再エネが主力電源となることを目指し、日本のどんな場所でも再エネで供給できるような未来をLooopがまず切り開いていくことを決意しました。

 当社は再エネ発電所を増やしていくとともに、再エネ電源の課題であるコントロールする技術に投資をしていき、再エネをスタンダードにしていきたいと考えています。われわれは、東日本大震災によって荒れ果てた日本の状況を見たときに、再エネを日本に広めようという想いで会社を創業しました。もう10年以上前のことになりますが、そのときの想いにもう一度立ち返って、志を新たに事業方針に策定し直した次第です」(中村氏)

エネルギー安全保障のために

 Looopが新しい事業方針を策定した背景には、LNGをはじめとするエネルギー資源価格の世界的な高騰がある。中村氏は、日本の現状を以下のように分析する。

 「2022年3月には需給ひっ迫警報が出され、大手電力を含めた電力会社が値上げに踏み切るなど、日本の経済全体に影響が及んでいます。LNGの価格は、ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに3月以降もさらに高騰しており、電力会社の発電コストは急騰しています。

 では、ウクライナ問題が解決すれば日本の電力事情は落ち着くのかというと、そうではなく、残念ながらもっと根本的な問題があります。いま、石油、石炭の火力発電所が次々と閉鎖されています。火力発電所には古いものが多く、維持管理を考えると採算が合わないという状況になってきています。老朽化した火力発電所の退出は、今後も進んでいくでしょう。一方で、電力の安定供給をしっかり保証する仕組みはできていません。電力自由化が必ずしもうまくいっていない理由は、そこにはあると考えています。

 さらに根本をたどっていくと、化石燃料に依存しているという日本の現状があります。日本の電源構成の約85%は、いまだ火力に頼っています。日本のエネルギー自給率は12.1%で、他の主要国と比較しても非常に低い水準となっております。化石燃料への依存を解消しないかぎり、日本は外的要因によってエネルギー危機に直面し続けることになります。

 さらに、いまは円安が進んでいることもあり、非常に厳しい状況です。日本のエネルギーにおける安全保障が脅かされているのです。こうしたなか再生可能エネルギーはエネルギー自給率を高めるうえで非常に重要な鍵となっており、岸田総理も4月26日の記者会見で再エネの最大限の導入が大切であるというような発言をしております。これまで再エネは脱炭素/地球温暖化防止という文脈だけで語られてきましたが、エネルギーの安全保障という新しい論点が出てきている、これが日本の現況となっています」(中村氏)

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