電力小売市場の活性化を担う「ベースロード市場」、低調な約定率とエリア格差への対応策は?法制度・規制(2/3 ページ)

» 2022年05月16日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

市場分断による値差の発生が課題に

 現在のBL市場は北海道、東日本、西日本の3つのブロックに区画されており、それらの基準エリアプライスは表1の通りである(正確には商品名も東京、関西)。これはBL市場の制度設計を行った2017年時点におけるスポット市場の分断実績に基づき、区画されたものである。

表1.BL市場商品と基準エリアプライス

 BL市場は、年間を通じた固定価格で売買することがその特徴であるものの、市場分断が発生した際には、実際の精算価格はエリア間値差の影響を被ることとなる。(北海道、東京、関西は、エリアプライスと基準エリアプライスが同じなので値差は発生しない)

図4.BL市場精算価格の算定式 出所:制度検討作業部会

 最近では九州⇔中国間や中部⇔関西間連系線の分断率が上昇しており、九州⇔関西間の2021年度の分断値差は2.76円/kWhとなっている。

 このため、売り手は費用を適切に回収できないリスク、買い手は約定価格で購入できないリスクが増加している。このことが、BL市場の取引量が低迷する一因となっている可能性がある。

図5.【エリアプライス】−【基準エリアプライス】(直近1年の移動平均値) 出所:制度検討作業部会

 2020年度第3回オークション約定価格と2021年度年間平均値差をもとに、各エリアに売り手・買い手事業者がいた場合の清算価格を算出したものが図6である。九州エリアの売り手は約定価格を下回る3.44円/kWhしか受け取ることが出来ず、買い手は実質的に3.44円/kWhで購入できる状態となっている。

 なおエリアプライスの2021年度年間平均単価は、関西で14.05円/kWh、九州で11.29円/kWhである。関西−九州間の市場分断の発生は7,354コマ(約42%)であり、分断発生時の値差平均値は−6.57円/kWhである。

 これはあくまで年間平均単価であるため、コマによって値差は最大で−62.17円/kWhとなり、このとき「BL市場約定価格6.20円−値差62.17円」により、精算価格は−55.97円/kWhとなり、売り手事業者が買い手に55.97円/kWhを支払うという逆転現象が生じることとなる。

図6.2021年度における各エリアの事業者の清算価格 出所:制度検討作業部会

 なお、エリア間値差のリスクヘッジを行うための商品として間接送電権がある。しかし関門連系線(九州⇒中国向き)の間接送電権の発行実績は非常に限定的であり、2019年度にはゼロ、2020年度には5週のみ、2021年度には2週のみにおいて間接送電権が発行されている。

 これは関門連系線では、間接オークションにおける経過措置計画量が多いためであり、経過措置が終了する2026年3月までこの状況が続くと予想される。

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