太陽光100%でEVをシェアリング、可搬型バッテリーも活用する中国電力の新実証太陽光(1/2 ページ)

中国電力が2022年4月から「完全自立型EVシェアリングステーション」の実証事業を開始。太陽光パネル搭載のカーポートを活用し、再生可能エネルギーのみでシェアリングEVを運用するという新たな取り組みだ。実証の背景や詳しい概要を取材した。

» 2022年05月19日 07時00分 公開
[川本 鉄馬スマートジャパン]

 中国電力グループは、2021年2月に2050年に向けたカーボンニュートラルへの挑戦を宣言。発電における脱炭素化に加え、顧客に対する脱炭素ソリューションの提案を強化している。2022年2月には「脱炭素ソリューション推進室」を発足し、企業に求められるSDGsやESG視点での取り組みを、脱炭素ソリューションでサポートする体制を整えた。

 今回発表した「完全自立型EVシェアリングステーション」の実証事業は、この取り組みの具体例の一つと位置づけられる。また、2050年のカーボンニュートラル社会実現を新しい形で実現するための模索ともいえる。

 今回の実証事業は、屋根部分に太陽光発電パネルを配したソーラーカーポートとEVを組み合わせ、車両のシェアリングサービスを提供するというもの。カーポートは系統電力から完全に切り離された自立型で、EVの利用に必要な電力のすべてを太陽光による発電でまかなう。また、カーポートには持ち運び可能な小型バッテリーを設置し、電動キックスクーターや電動自転車などにも使えるようになっている。

系統電力から切り離されて運用されるソーラーカーポート(図版提供:中国電力)

 ソーラーカーポートおよびシェアリングステーションは、広島産業会館の駐車場に設置し、EVは複数の法人と周辺住民向けにシェアリングサービスとして貸し出しを行う。車両としては日産リーフとマツダMX-30(EV MODEL)が用意された。

屋根全体に太陽光発電パネルを配したEVシェアリングステーション。系統電力からは完全に独立し、すべての電力を太陽光発電でまかなう(画像提供:パナソニック)
ソーラーカーポートでは、可搬型バッテリーの充電も可能。このバッテリーは、キックスクーターや電動自転車などで利用できる。

複数の技術を組み合わせて、脱炭素社会の実現を目指す

実証事業について説明する中国電力社長の清水希茂氏

 中国電力がこのような実証事業を始めたのは、全世界的に脱炭素を目指す動きが広がるなか、顧客である企業や自治体の脱炭素化を支援するために、独自の施策が必要だと考えたからだという。

 中国電力のサービス提供地域は、自動車や鉄鋼、化学、半導体などの産業が集積している。当然ながらカーボンニュートラルは大きな課題となるが、自家発電の施設を備えた企業も多いという。そのような環境に対して、中国電力はどのような脱炭素ソリューションを提供できるのか――これが、同社にとっての課題となる。

 そこで中国電力では、さまざまなソリューションのラインアップを用意し、いろいろな技術を組み合わせることで、顧客のカーボンニュートラルへの取り組みをサポートする方向性を打ち出している。

 中国電力 販売事業本部 脱炭素ソリューション推進室長の前原利彦氏は、「企業のカーボンニュートラルに向けた取り組みは、一つの施策だけでは実現できない」とし、「いろいろな施策や資産を組み合わせる中で、カーボンニュートラルをいかに実現していくのか。中国電力ではさまざまな技術やソリューションを組み合わせることで、顧客のカーボンニュートラルへの取り組みをサポートする取り組みを進めている」と話す。

 中国電力では、グリーン電力、省エネ・省CO2に向けた各種の診断サービス、エネルギーに関する最適システムの提案、エネルギー・リソース・アグリゲーションのサービスなどを展開している。今回の実証事業でも、単なる太陽光発電のカーポートではなく、バッテリーの蓄電システムやEVのシェアリングサービスを組み合わせた設計には、このような流れがある。

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