再エネを北海道から東京へ送る「長距離直流送電」、実現への課題と今後の展望エネルギー管理(1/3 ページ)

日本国内における将来的な洋上風力の導入拡大を見越し、発電した電力を遠方の需要地に送電できる「海底直流送電」の実現に向けた検討が進んでいる。2021年3月からスタートした「長距離海底直流送電の整備に向けた検討会」で議論された、これまでの論点と今後の展望をまとめた。

» 2022年06月13日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、洋上風力発電の大規模な導入が期待されている。「洋上風力の産業競争力強化に向けた官民協議会」において示された2040年時点の案件形成30〜45GW(3000〜4500万kW)のうち、約10〜15GWが北海道エリアに分布している。

 しかしながら北海道エリアの電力需要は270〜540万kW程度であるため、大需要地、例えば東京エリアへの送電が不可欠である。

 このような長距離の送電に適した技術が高圧直流送電(HVDC)であり、広域系統マスタープランにおいて、北海道からは海底ケーブルを用いた海底直流送電の採用が想定されている。

 国内では長距離の海底直流送電の実績が乏しいことから、2021年3月に「長距離海底直流送電の整備に向けた検討会」が設置され、長距離の海底直流送電に関する技術的課題や費用、期間、ルート、ファイナンス等の具体的検討が開始された。

 検討会はすでに計6回開催されているので、本稿ではこれまでの検討の概要をまとめてお伝えしたい。

直流送電の特徴とは?

 現在、送電系統の多くは交流(AC)で形成されているが、一部の地域間連系線で直流(DC)送電が用いられている。直流と交流の長所と短所の概要は表1の通りであり、直流は長距離の送電に対してコスト面での優位性がある。

表1.直流と交流の長所と短所 概要 出所:長距離海底直流送電の整備に向けた検討会

 国内最長の直流送電線である北本連系設備(北海道−本州)は陸上の架空線124km、海底ケーブル43kmの合計167kmであるが、欧州では国際連系線も多数存在し、英国⇔ノルウェー間の「North Sea Link」は海底ケーブル部分で720kmもの長大なものである。

 なおIEC(国際電気標準会議)では、直流送電のうち30kV程度以上を高圧(HVDC)と分類しているので、本稿でも直流送電とはHVDCを意味することとする。

 直流送電のコスト優位性の要因の一つが導体数の少なさである。表2では1回線のみの比較となっているが、通常は安定供給確保の観点から2回線構成とされることを踏まえると、交流では3本×2回線で6本の送電線が必要になるのに対して、直流では3本もしくは4本で済むこととなる(北本連系設備では本線2条、帰路線1条の構成)。

表2.直流と交流の比較 出所:NEDO

 他方、直流送電線は既存の交流系統に接続する必要があるため、送電側ではAC→DCの交直変換設備が、また受電端ではDC→ACの電力変換器が必要となる。よって短距離であれば、交流送電のほうが低コストとなる。

図1.電力変換器を伴う直流送電のイメージ 出所:三菱電機
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