「3.0」の時代に突入したソーラーシェアリング、変化する社会での役割と今後の展望ソーラーシェアリング入門(56)(2/3 ページ)

» 2022年07月15日 07時00分 公開

次の転換期はどこにあったのか? 〜政策への導入拡大と農業の多様化〜

 では、次の転換点はどこだったのでしょうか。政策的な観点から評価すると、2018年5月に先述の通知が見直され、一時転用許可の期間が最長10年以内となったのが大きな転換点だったと考えます。

 同時に、政府の各種政策や計画に営農型太陽光発電の文字が増えたのもこの時期です。2017年6月には当時の安倍内閣による「未来投資戦略2017」に営農型太陽光発電が記載され、翌年の環境省による「第5次環境基本計画」では営農型太陽光発電が重点事項の一つに取り上げられたことは大きなインパクトがありました。

 その後も、「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」「農林水産省 環境政策の基本方針」「食料・農業・農村基本計画」などに、次々と営農型太陽光発電の文字が記されるようになっていきます。それまでは太陽光発電の中でもニッチな取り組みであり、農林水産省の政策の中でもほとんど触れられることのなかったソーラーシェアリングが、政策の表舞台に登場するようになったのです。ここが、「ソーラーシェアリング/営農型太陽光発電2.0」の始まりだったと言えるでしょう。

 ソーラーシェアリングの設置件数が1000件を超えて2000件に迫り、高圧・特別高圧規模の設備も建設されるようになり、設備もアルミ架台などを用いた現在の設計に近いものが増えていきました。私も2016年から藤棚式の架台設計パターンを鉄やアルミなど多様な素材をベースにしてモデル化することに取り組んでいましたが、その一つの結実が自社設備である千葉市大木戸アグリ・エナジー1号機です。

アルミ製のソーラーシェアリング専用架台の例(千葉市大木戸アグリ・エナジー1号機)

 農業面でも水田、畑、果樹園、牧草地など設置場所が多様化し、先行する事例が4年・5年と農業生産の実績を重ねて行くことで作物の幅も広がっていきました。ただ、まだまだFITに依存した収支環境であることは変わりなく、初期の高額FIT案件も多数残存していたことから、農業面でのエネルギー利用や農村部を含む地域内での電源としての活用は低調でした。

 普及を進めていく上では収益性のアピールも重要でしたが、ソーラーシェアリングの新たな可能性を探るための研究も始まり、農林水産省が2018〜2019年度にかけて「営農型太陽光発電の高収益農業の実証事業」を実施したほか、2020〜2021年度にかけては「営農型太陽光発電システムフル活用事業」が行われました。

 国際的な展開が本格化したのもこの時期で、2019年5月にはG20新潟農業大臣会合で農林水産省と一般社団法人ソーラーシェアリング推進連盟の共同ブースにより「営農型太陽光発電(FarmingPV)」を国内外にPRしています。

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