「3.0」の時代に突入したソーラーシェアリング、変化する社会での役割と今後の展望ソーラーシェアリング入門(56)(1/3 ページ)

ソーラーシェアリングについて解説する本連載。今回は、国際情勢の変化やエネルギー需給のひっ迫など、激変する社会環境とともに変化しはじめているソーラーシェアリングの役割と今後の展望について考えます。

» 2022年07月15日 07時00分 公開

 農林水産省による営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)に関する通知が発出されてから丸9年が経ち、前回までに取り上げた有識者会議の開催や、NEDOによる営農型太陽光発電設備の設計・施工ガイドラインが整備されるなど、ソーラーシェアリングのさらなる普及拡大に向けた足場固めが進みつつあります。

 それと同時に、ソーラーシェアリングが社会において果たすべき、あるいは期待される役割も変化しつつあることを感じます。今回はその変化について、再生可能エネルギーの確保や農業の脱炭素化といった国内の視点のみならず、世界的なエネルギー資源及び食料情勢の激変も踏まえて考えてみます。

ソーラーシェアリングの役割の発展

 2013年に農林水産省から「支柱を立てて営農を継続する太陽光発電設備等についての農地転用許可制度上の取扱いについて」とする通知が出されてから、農地の一時転用許可によるソーラーシェアリングの設置が正式に認められるようになり、国内で導入事例が増え始めました。これがソーラーシェアリングにとっての最初の大きな転換点です。

単管パイプによる藤棚式ソーラーシェアリング設備の例

 当時、FIT制度がスタートしたことで太陽光発電を含む再生可能エネルギー事業が活発になっていく中で、農業生産を維持しつつ農業者の所得向上を目指すという点がソーラーシェアリングの訴求ポイントでした。単管パイプとスリムモジュールを用いた手作りの設備が多く、施工も農業も全てが手探りだった頃、このソーラーシェアリングの黎明期が「ソーラーシェアリング/営農型太陽光発電1.0」の時代だったといえます。

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