FIT終了後の中小規模太陽光をどうすべきか――政府が長期稼働に向けた施策を検討太陽光(2/3 ページ)

» 2022年07月25日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

大規模案件の開発は鈍化、セカンダリーマーケットが成長

 太陽光発電の新規案件開発に関しては、適地の減少により大規模案件の開発は鈍化しており、中規模案件にシフトしつつある。

 またRE100等のイニシアティブに対応するため、再エネ電力に対する需要が増加していることから、既設の太陽光発電を取得(買収)する動きも広まりつつある。つまり既設太陽光発電所を対象としたセカンダリーマーケットが成長しつつがあるが、太陽光発電の規模により、その動きは異なる。

 例えば四国電力は、既設太陽光発電所の取得(買収)を募集しているが、その対象は1MW以上の案件に限定されている。

 小規模案件の場合、一定の再エネ発電量(kWh)を得るためには、買い手は多数の太陽光発電所を取得(買収)する必要がある。

図4.太陽光発電に対する規模別ニーズ 出所:再エネ大量導入小委

既設太陽光発電の取得関連費用

 太陽光発電に限らないが、既存の事業や設備を当初のオーナー(事業者)から新たな事業者が購入を検討するにあたっては、その採算性・事業性が事前に評価される。この事業性評価はデューデリジェンス(DD)と呼ばれる。

 太陽光発電の採算性・期待利益は、一定期間の期待収入(設備容量kW×設備利用率(%)×売電期間(年)×売電価格(円))から、その取得コスト(設備取得費+(DD+保守点検(O&M)+交渉費用等)×件数)を控除することにより算出される。

 ここで、既設太陽光発電に対してDDを実施する場合、主に以下の項目が評価対象となる。仮に取得案件が、地域とのトラブルを抱えた案件であった場合、取得後に大きな負担となるため、慎重なDDが必要とされる。

既設太陽光発電の主なデューデリジェンス項目

  • 発電量実績
  • 発電・送電や用地使用にかかる権原の有無
  • 各種法令の順守状況
  • 土木・構造に関する評価
  • 特定契約、接続契約等太陽光発電システム関係書類の確認
  • 機器の配置など発電システム設計の確認
  • モジュールの表面状態など設置機器の状況確認

 具体的なDD費用は案件ごとに異なるが、1MWクラスの既設太陽光案件買収時のDDコストの一例として、200万円程度であることが報告されている。

 フルスコープでDDを実施する場合、DDの項目および費用は案件規模の大小を問わず、それほど変わらないため、小規模案件ではその費用負担が相対的に大きなものとなる。

簡易的なDDを行うことによりコストを抑制することも可能であるが、その場合は一定のリスクを許容することを意味する。

 また図3で見たとおり、小規模太陽光発電の保有主体は個人であることが多い。個人は法人と比べると、DDの書類準備等に不慣れであることが多いと予想されることから、買い手にとって、適正案件の選定が一段と困難であると考えられる。

 また複数の小規模案件を集約(アグリゲーション)することにより、保守点検(O&M)を費用効率的に実施することが期待されている。

 それでも、小規模案件を多数取得することは、大規模案件を1件取得する場合と比べると、点検対象設備数が多いことや発電所間の移動が発生することにより、kWhあたりのO&Mコストは相対的に高額とならざるを得ない。

 また電気事業法では、電気主任技術者が対象太陽光発電設備に2時間以内の到達を求める「2時間駆けつけルール」が存在するため、発電所間の近接性も重要となる。(ただし、本ルールは早期に緩和予定である)

 以上より、小規模案件では集約化(アグリゲーション)のメリットが大きいにも関わらず、付随費用の割高感や手間の煩雑さから、小規模案件は買い手にとって魅力が薄く、集約化が進みにくいという課題が明らかとなった。

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