原子力発電の円滑な廃炉へ残る課題――日本の状況に合わせた体制整備が急務にエネルギー管理(1/4 ページ)

日本国内にある約60基の原子力発電所のうち、24基の廃炉が決定している。2022年7月には「廃炉等円滑化ワーキンググループ」が設置され、円滑な廃炉の実現に向けた課題の整理と対策の検討がスタートした。

» 2022年08月05日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 現在、日本国内には原子力発電所が60基存在し(建設中含む)、このうち24基が廃炉を決定済みである(このうち、6基が福島第一原子力発電所の事故炉)。

図1.国内原子力発電所の現状 出所:原子力小委員会

 通常、廃炉・廃止措置事業は数十年の長期間を要するものであり、これを効率的かつ円滑に実施し、完遂するためには多くの課題が存在する。このため、2022年7月に原子力小委員会の下に新たに「廃炉等円滑化ワーキンググループ」(WG)が設置され、廃炉に必要な事業体制や資金確保の在り方等の検討が開始された。

 なお、福島第一原発事故炉の廃止措置については、すでに「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」が管理・監督する仕組みとなっているため、本WGの検討対象は通常炉のみである。

原子力発電所の廃炉プロセス

 一般的に、原子力発電所の廃炉プロセスは図2のような4つの段階で構成されるものであり、廃炉の完了まで30年程度を要する作業である。

 このうち「第2段階」および「第3段階」では設備を解体し、放射性廃棄物が大量に発生する重要なプロセスとなる。

図2.原子力発電所の廃炉プロセス 出所:原子力小委員会

 廃炉決定済みの18基のうち、周辺設備を解体する第2段階に進んだものは現在6基であり、第3段階の原子炉解体まで進んだ原子炉はまだ存在しない。

 このため国内での廃止措置作業(施設解体、廃棄物の処理・処分)に関するノウハウの蓄積はまだ不十分であり、全国で今後本格化する廃止措置作業を合理的かつ効率的に進めていくための準備・検討をしていくことが必要とされている。

 また、廃止措置プロセスにおいては当然ながら発電による収益が無いため、廃止措置のための資金を事前に安定的に確保した上で、コスト最小化に向けて効率的に事業を実施することが重要である。

図3.原子力発電所 廃炉スケジュール 出所:原子力小委員会

 しかし図3のように、実際に廃炉を進める上では、複数の原子炉の廃止プロセスが重なることが想定される。エンジニアリング会社の数など、国全体でのリソースに制約があるため、それぞれの廃止措置を遅滞なく着実に進めるためには、すべての事業者の連携による国全体での合理化・計画的な取組が、より重要となってくると考えられている。

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