原子力発電の円滑な廃炉へ残る課題――日本の状況に合わせた体制整備が急務にエネルギー管理(2/4 ページ)

» 2022年08月05日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

諸外国の廃炉実施体制は?

 国内では原子炉の廃止措置は道半ばであり、各事業者が個別に廃炉関連事業を実施しているが、今後は効率的な廃止措置実現のため、事業者間の連携によるノウハウ、設備、人材等の共有が志向されている。

 このためWGでは、先行する諸外国のうち、特に米国と英国の廃炉実施体制が参考とされている。

図4.諸外国の廃炉事業環境 出所:原子力小委員会

 米国では、原子炉設置事業者数は30社程度、運転基数は93基である。すでに閉鎖基数が35基、廃炉完了基が13基に達しており、原子力市場規模の大きさを背景に、「廃炉先進国」として原子力の廃炉がビジネス市場として確立している。

 このため、事業者間の市場での競争を通じて廃止措置が効率化されており、結果として、「1.請負型」「2.ライセンス移転型」「3.資産買収型」の3つのビジネスモデルが存在している。

 これに対して、国有時代の原発の廃炉からスタートした英国では、国営の廃止措置機関である「NDA」が廃止措置の司令塔機能を果たすことにより、国全体での廃止措置工程を最適化・効率化している。

 英国NDAが廃止措置を担う約30基の原子力発電所は、ほとんどがガス冷却炉(GCR/AGR)であることから、NDAが一括して廃止措置をマネジメントすることが効率的となる構造にある。

 米国と比べて市場の小さい英国では、計画的な廃炉スケジュールによって先行炉の知見を後続炉に生かすことにより、国内の限られたリソースを効率的に活用し、廃炉ノウハウを蓄積している。

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