原子力発電の円滑な廃炉へ残る課題――日本の状況に合わせた体制整備が急務にエネルギー管理(3/4 ページ)

» 2022年08月05日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

日本市場の特徴にあわせた廃炉体制の構築へ

 現在日本では原子炉等規制法に基づき、原子炉の設置者(旧一般電気事業者等)それぞれが、各原子炉の廃止措置を実施している。日本の原子炉市場規模は、米国の半分以下であり、英国と同程度の市場規模である。

 また日本の原子力発電所は、ガス冷却炉(GCR)、沸騰水型軽水炉(BWR・ABWR)、加圧水型軽水炉(PWR)など様々な炉型が混在し、同じ炉型であってもプラントメーカー(日立、東芝、三菱重工業、海外メーカー)や立地地域の違いにより、非常にバリエーションが多い状態となっている。炉型の違いによって、放射性廃棄物の発生量やそれらを一時保管するためのスペースの状況が異なる。

 このため日本では、英国のような一括管理型の廃止措置は困難であり、個別の原子炉の状況に合わせて、原子炉設置者がそれぞれのマネジメントを行っていくことが適切と考えられる。

 他方、日本は米国ほど市場規模が大きくないため、市場競争だけに任せることで効率性が達せられるとは限らない。このため、事業者間の連携により、全体として計画的・合理的な廃止措置を進めていくための工夫が必要と指摘されている。

 国内での先行事例として、原子力発電の使用済燃料の再処理事業については、2016年に「使用済燃料再処理機構(NuRO)」が設置され、国全体の再処理等事業を考慮した計画が策定されている。

 また福島第一原発の事故炉の廃止措置については、「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」が廃止措置の戦略プランの策定を行うとともに、必要な技術に関する研究開発、助言・指導・勧告、廃炉等積立金の管理等を実施している。

 電気事業連合会では、原子力事業者間の新たな連携の方向性として、国全体最適の戦略の検討や、設備共用・共同調達、同種作業のシリーズ化を全国展開することを提案している。

 ただし、ノウハウの蓄積に大きく貢献する先行プラントとこれらの活用で恩恵を受ける後続プラントの間での公平性が課題とされており、先行者に対する何らかのインセンティブ付与が必要になると考えられる。

図5.原子力事業者 新たな連携の方向性 出所:電気事業連合会

 また、敦賀原子力等を保有する日本原子力発電(原電)は、米国の廃止措置会社エナジーソリューションズ(ES)社と協力協定を締結し、ES社の米国廃炉プロジェクトでの原電社員人材育成や、ES社ノウハウの提供、日本での廃炉作業を共同で実施すること等を目指している。

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