現在国内では「解体引当金制度」が存在し、原子力事業者は省令に基づき、毎年、各発電所の解体費用の「総見積額」を算定し、原則40年の稼働期間中に定額ずつ引き当てを行っている。
引当金は各事業者の貸借対照表で負債として計上されているが、このことをもって廃炉という使途に限定した現金が確保されるわけではない 。
原子炉を保有する旧一般電気事業者は、小売全面自由化以降の競争激化や燃料費高騰に伴う収益低下や赤字に直面しており、廃炉資金確保の不確実性が課題として指摘されている。
諸外国では廃止措置に関する資金確保として、外部基金への拠出方式や内部積立方式、内部留保方式により、廃炉資金を確保することが法的に義務付けられている。
また日本でも、使用済燃料の再処理については、発生した使用済燃料の量に応じて、原子力事業者が先述の「使用済燃料再処理機構(NuRO)」に拠出金を支払うことにより、必要な資金を安定的に確保している先例がある。
クリアランス制度とは、原子力発電所の廃止措置等に伴って発生する放射性廃棄物のうち、放射性物質の放射能濃度が低く、人の健康への影響がほとんどないものについて、国の認可・確認を得て、通常の産業廃棄物として再利用または処分できる制度である。
110万kW級の沸騰水型軽水炉(BWR)原子炉を解体した場合、金属やコンクリートのクリアランス物が約2.8万トン排出されると試算されている。資源の有効利用の観点から、金属等の再利用の取り組みが進められている。
またクリアランス物の利用・処分が進まない場合、廃止措置に伴う解体物の搬出ができず、廃止措置の障害となることが懸念されている。
福井県では「嶺南Eコースト構想」のもと、廃炉事業の産業化を検討しており、その一つのプロジェクトとしてクリアランス物の事業化がテーマとされている。
円滑な廃止措置を進めていくに当たっては、立地地域の理解を得ることが何より重要である。このためには、それぞれの原子力事業者が主体となりつつも、全国的な理解を得るために事業者間、また国との連携・協働が行われることが望ましい。
図5のような新たな連携体制は、技術面や設備調達費用面に限ることなく、コミュニケーション面など多面的な連携が進むことを期待したい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.