太陽光発電の「スマート保安」定着に必要な改革と、経産省が公表したKPIの考え方法令違反を防ぐ太陽光発電の保安ポイント(6)(1/3 ページ)

昨今大きな課題になっている太陽光発電事業における法令順守や、適切なO&Mの実行に関するポイントを解説する本連載。最終回となる今回は、太陽光発電における「スマート保安」の導入と定着に向けて必要なポイント、そして経済産業省が公表したスマート保安のKPIについて解説します。

» 2022年08月09日 07時00分 公開

 前回は、番外編として山梨県の太陽光発電に関する新条例について解説しました。連載の最終回となる今回は、再び太陽光発電における「スマート保安」の導入と定着に向けて必要なポイント、そして経済産業省が公表したスマート保安のKPIについて解説します。

スマート保安の導入・定着のために必要なポイント

 太陽光発電におけるスマート保安の導入を進めるためには、大きく2つのポイントがあると考えています。一つが「太陽光発電所の運用のデジタル化」、もう一つが発電事業者と保守保全事業者などの「保安に関係する企業の組織変革」です。

 まず「太陽光発電所の運用のデジタル化」については、高度なスマート保安を実現するための前提となる部分であり、非常に重要なポイントです。具体的なデジタル化の内容は、主に以下の3つの項目に分けられると考えています。

1.情報のデジタル化

 DX(デジタル・トランスフォーメーション)を考慮しつつ、3つの電子化があります。

2.現場の効率化

 デジタル化によって蓄積された「知識・経験データーベースの活用」「ドローン・IoT・センサーなどの活用」「5Gとウェアラブルなどの活用」「遠隔監視システムの活用・高度化」などが考えられます。

3.業務と意思決定の高度化

 「遠隔監視システム・カメラによる異常を自動検知」「画像・データーによるAI異常検知」「予兆検知によるO&M改善」の実現による「運転・点検の半自動化」などが考えられます。

 デジタル化の取り組みとセットで重要になるのが、もう一つの「保安に関係する企業の組織変革」です。なぜ組織変革が重要なのかというと、発電所のデジタル化やスマート保安の導入・定着は、多くの企業・組織にとって、“今まで何十年も慣れ親しんで当たり前にやっていた業務”と大きく内容が異なるからです。

 経済産業省の有識者会議では、スマート保安の導入に向けた課題として「点検結果を紙で保存する事業者が多く、経時的なデータ分析が困難」「設備規模や電気主任技術者の選任形態によってスマート保安技術の導入率や、必要となる技術が異なる」といった点が挙げられています。

 このような課題を解決し、新しい業務や技術への対応を進めるためには、経営判断による組織変革が欠かせないものといえるでしょう。スマート保安の導入に向けた経営ビジョンの策定とトップのコミットメント、それに基づく新たな管理・業務プロセスの構築、そしてその具体化に必要な人材像の検討や育成・技能伝承の仕組みづくりが必要です。

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