太陽光発電の「スマート保安」定着に必要な改革と、経産省が公表したKPIの考え方法令違反を防ぐ太陽光発電の保安ポイント(6)(2/3 ページ)

» 2022年08月09日 07時00分 公開

業務の基準・内容のバラツキを減らすことが重要な課題に

 産業用太陽光発電は歴史が浅く、2017年4月のFIT法の改正で点検が義務化されて以降O&Mが本格化し、技術・手法の蓄積が始まった段階といえます。

 このため、点検の実施時間、精度や効率は、「1.異常・故障の有無と履歴」「2.設備の配置やアクセス」「3.人的能力(手法・経験・専門知識など)」「4.地域の環境(風雨、雪、雑草、害獣など)」「5.点検道具・検査器具」などによって、大きく違うのが実情といえます。

 同じ事象に対して、技術者やO&M業者、電気主任技術者ごとに、判定方法やその基準が異なってしまっているというのが現状であり、そのために保全保安業務に関する業務工数が増えると同時に、複雑化している状況といえます。

 発電所の状態を常時把握・対処しつつ、点検時(予防保全)に是正作業(予知保全)も同時に行うためには、このような煩雑な業務内容を整理・均一化し、保安実務と管理の業務工数を削減することが必要です。費用と時間が限られるなかで、スマート保安の要ともいえる「予知保全」を行うためには、現状の業務の効率化が必須といえるからです。

 そのためには、人材育成と企業変革の進捗に合わせて「遠隔監視システムなどの新技術の導入」と「デジタル化による実務の作業と管理の効率化」を段階的に導入していく必要があります。これにより、「業務と全体の管理」の削減につながると考えられます。

 将来的にはAI導入などにより高度な業務や意思決定がさらに向上しつつ、コスト削減が進むと想定され、低圧太陽光発電所や住宅用太陽光発電にも普及すると思われます。

具体的に以下の表にまとめてみました。

これまでの保安業務とスマート保安の業務工数の比較(※筆者作成)

 太陽光発電所の運営は、「1.保安(O&M)業務=現場での活動」と「2.事務・管理業務=事務所での活動」の2つに大きく分けられます。

 スマート保安は、現場作業の効率化が主だと思われがちですが、私は紙ベースでの記録・報告書の作成が一般的な現在の状況が、デジタル化・データの2次活用(データーのAI化・高度な分析)により加速度的に改善されることで、結果的に事務・管理業務の効率も大きく改善されると考えています。

 現場と事務・管理が互いに刺激し合ってスマート保安が進み、より高度な業務・意思決定に変化していくと考えています。この変化により、新しい技術・仕組みが求められ新しいサービス・商品・技術が生まれ、世界的に競争力が高い産業に発展することを期待しています。

 ただし、私は2025年からスマート保安に全て変わるのではなく、日本人の国民性を理解した上で、技術習得・新しい仕組みへの教育と納得など、各段階を経て、浸透していくと考えています。

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