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» 2022年03月29日 07時00分 公開

太陽光発電も「スマート保安」の時代へ、その前に理解しておきたい保全業務の種類と違い法令違反を防ぐ太陽光発電の保安ポイント(3)(1/3 ページ)

昨今大きな課題になっている太陽光発電事業における法令順守や、適切なO&Mの実行に関するポイントを解説する本連載。今回は、今後の太陽光発電の新たな保全方法として注目されている「スマート保安」について解説します。

[増田幹弘 野原ホールディングス株式会社,スマートジャパン]

 本連載の第1回第2回では、太陽光発電事業における保安の重要性について詳しく解説しました。

 今回からは数回にわたり、現在、官民連携で検討が進められている「スマート保安」について解説します。スマート保安とは、IoTやセンサーなどの先進技術を利用した、より高度な保安管理業務のことです。発電設備の詳細な状態監視やトラブルの予兆検知の実現など、電気保安水準と生産性の向上を両立させるものとして、現在、2025年をターゲットイヤーとして官民連携で技術検討が進んでいます。

 今回はまず現在スマート保安が注目されている背景から説明し、その後、スマート保安を理解する上で重要な、保全業務の種類別の違いと特徴について解説します。

保全・保安業務をとりまく環境が大きく変化

 太陽光発電を含む電力・石油・化学・ガスなどの産業・エネルギーなどのインフラ設備分野では、設備の高経年化・老朽化に伴い、保全や検査作業の工数が増加しています。その一方で、それを担う人材の高齢化および慢性的な不足と、次世代への技術伝承といった課題への対策が急務となっています。また、気候変動による災害の規模と回数の増大、設備に対するサイバーテロへの備えや、技術革新・制度変更への対応など、保安業務はその重要性が増すとともに、年々複雑化が進んでいる状況です。

 さらにデジタル庁の発足など、国を挙げてのデジタル社会の到来や、3年目に入った新型コロナウイルス等の感染症リスクへの対応およびそれに伴うリモートワークの普及など、働き手を取り巻く社会・生活様式も大きく変わっています。このような急激に変化する社会環境下でも、電力の保安は経済活動を維持するための業務として、安全安心を保ちつつ確実な事業継続を求められています。

 こうしたさまざまな課題や変化に対応するために、その早期の導入が期待されているのが先進技術を活用したスマート保安というわけです。

保全の分類と課題

 スマート保安はこれまでの手法とどう異なるのかを理解するために、まず保全業務について改めて種類別に整理しておきましょう。さまざまなご意見はありますが、保安業務には、設備を正常に保つ「保守」と、安全を守り保つ「保全」に分類されますが、本連載では「保全」は保守活動を含んだ保全活動と定義します。

 保全を大きく分けると「事後保全」「予防保全」「予知保全」の3つに分類され、以下の通り特徴と課題があります。このうち、スマート保安の一部といえるのが予知保全です。

1-1事後保全:RM(Reactive Maintenance)/BM(Breakdown Maintenance)

「事後保全」は、太陽光発電所だけでなくすべての設備や機械類などの保全方法として最も用いられている方法で、設備などが破損・故障した後にメンテナンスや修理を行うことです。メンテナンスを実施していない太陽光発電所においては、最も用いられている保全方法と思われます。

1-2事後保全の課題

「事後保全」=「壊れたら直す」は上述の通り太陽光発電だけでなく他産業の保全方法として、最も見受けられる方法です。しかし、太陽光発電所の場合、破損や故障の程度にもよりますが、発電所の運転停止、台風時にボルトナットの緩みによる太陽電池モジュールの敷地外への飛散や、隣接地・道路などへの土砂流出、工作物の半焼、半壊など、重度の故障・破損の場合は電気事業法の「安全の確保」やFIT法で求められている「安定稼働と安定供給」に適しない場合もあります。

 また、他の保全と比べ修理などにかかる費用が高額になるだけでなく、信頼や時間の損失などの面でも、リスクが高い保全方法であり、太陽光発電所の保全としては経済合理性が低いと考えます。しかし、低圧発電所ではこうした事後保全しか行っていない事例が多いと聞いています。ぜひ、他の保全方法を検討することをおすすめします。

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