太陽光発電も「スマート保安」の時代へ、その前に理解しておきたい保全業務の種類と違い法令違反を防ぐ太陽光発電の保安ポイント(3)(3/3 ページ)

» 2022年03月29日 07時00分 公開
前のページへ 1|2|3       

事後・予防・予知保全の違いをバッテリー交換で例えると

 「事後」「予防」「予知」というのは、あまり聞きなれない表現だったという方もいらっしゃるかもしれません。そこで以下では、それぞれの保全方法について、車のバッテリー交換に例えてみます。

事後保全の場合

 職場から発電所まで往訪するため、車を利用しようとしましたがエンジンがかからなくなりました。急遽、車修理の技術者に職場へ来てもらい、車の検査を実施してもらいました。その結果、バッテリーの電圧が基準値より低く、バッテリー液量も下限値をわずかに下回っていることが判明しました。原因を追究するとバッテリー劣化が主原因と判明し、新品のバッテリーに交換しました。

 このように故障発生後に原因(電圧低下)を調べ、原因の発生理由(劣化)を特定し、故障に対応する行為(交換)が「事後保全」になります。

予防保全の場合

車のバッテリーの交換推奨時期(例えばメーカー推奨の3年ごとに交換など)に、故障などの有無に関わらず、定期的に交換するのが「予防保全」になります。

予知保全の場合

 上記の事例に対し、定期的にバッテリーの電圧や液量をチェックし、さらにエンジンのかかりが悪くなってきたなど、実際の事象も加えたさまざまな情報から総合判断し、バッテリーを交換やバッテリー液の補充を実施するのが「予知保全」になります。

 経済的視点で考えると、「事後保全」は緊急出張検査費、新品バッテリー費、廃棄バッテリーの持帰り処分費、交換費、スケジュール調整など、最も損失が大きくなり、リスクが高いと言えます。

 「予防保全」は使い方、使用頻度、使用環境などを考慮せず、決められた時期に交換するので、実際はコンディションが良くもう少し長く使える部品でも交換することとなり、メンテナンスのコストが高くなりやすい傾向がありますが、「事後保全」よりも経済性は優れ、リスクは低いと言えます。

 「予知保全」はコンディションから判断し、交換時期などを決めるので、管理面では多少手間がかかりますが、最も経済合理性が優れると考えられています。

保全業務の費用のイメージ

 次回はスマート保安についてより深堀りする予定です。また今後、前回の記事で触れた山梨県の条例(「山梨県太陽光発電施設の適正な設置及び維持管理に関する条例」)についての詳しい解説や、保安視点での対策についても追加連載する予定です。どうぞ楽しみにお待ちください。

⇒連載一覧はこちら

著者プロフィール

増田幹弘(マスダ ミキヒロ)
野原ホールディングス株式会社 経営企画部 再生エネルギープロジェクト室長
太陽光発電評価技術者、緑の安全管理士、「東京都農薬指導管理士」

大阪出身、近畿大学卒業。1999年、私費にて参加したエコに関する研究会にて、電気を庭に取り付けた太陽光発電と自動車の大型バッテリーから、給湯は太陽熱を利用するなどの、今でいうゼロエネルギー住宅(奈良県)を視察し感銘を受ける。自宅をオール電化にし屋根には発電システムを取り付け、自宅エネルギー消費データを2年間記録、上記研究会にて発表。その後も省エネ、省資源についての研究を深め、建材の開発、リサイクルシステム、工場のエネルギー消費削減に大きく貢献。

2009年、野原産業(現 野原ホールディングス)に入社。2013年、事業開発部において八ヶ岳研修所の遊休地活用事業として太陽光発電プロジェクトを主幹。現在は、太陽光発電に関わる新事業として、第三者の視点からの太陽光発電設備の保守・点検(O&M)サービス「SUN SUN GUARD 20」を展開。豊富な知識と多様な事例、経験から、太陽光発電事業者向けセミナーにて講師も務める。


前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.