新条例で太陽光発電所の運用保守にも変化の兆し、今後のO&Mにおけるポイントとは?法令違反を防ぐ太陽光発電の保安ポイント(2)(1/4 ページ)

昨今大きな課題になっている太陽光発電事業における法令順守や、適切なO&Mの実行に関するポイントを解説する本連載。今回は、優良な発電事業者を増やすためにまず取り組みたい、今後の保安業務における3つのポイントについて解説します。

» 2022年02月24日 07時00分 公開

 2022年7月で、FIT法(電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法)の開始から10年が経過します。2012年度に太陽光発電設備を運転開始した方は、FIT法による売電期間は残り10年という節目の年です。しかし、日本が目標とする「2050年カーボンニュートラル」に向けては、あと28年と、まだまだ長い道のりです。

 太陽光発電がこの目標達成に貢献する、安心・安全な基幹電源としての立場を確立するために、筆者は2022年度を世代交代や次世代の育成を含めて、太陽光発電事業の総点検を実施し、次の時代・ステージに向かう転換点の年となるようにしたいと考えています。

 前回は、現在国内の太陽光発電においては、残念ながらFIT法に定められている安全対策などの規定を順守している発電所の方が少数派となっている現状を説明しました。

 この結果、半世紀以上前から環境問題への取り組み、持続可能な社会やカーボンニュートラルの実現への貢献に取り組む数多くの優良発電事業者まで、風評被害を始めとするさまざまな事業リスクにさらされるケースが年々増えています。

 私は、法令を順守しているO&M会社が優良な発電事業を支援できると考えています。優良なO&M会社が、健全な発電事業者を守り、増やすための保安業務を実行していくことで、優良な発電事業者が、法令違反をしている多数の発電事業者と同類にみなされないよう支援できるのではないか、と思うのです。

 そこで2021年度は、優良発電事業者を事業リスクから守り、優良なO&M会社を増やすために、セミナーなどを通じて優良な発電所を増やすための方法を紹介してきました。具体的には、O&M事業会社として実行できる次の3点を実施・強化していこうというものです。

  1. 法令順守点検を実行しよう
  2. 法的な観点から、なぜO&Mが必要なのかわかりやすく説明しよう
  3. エビデンス(書面)を充実させよう

 これらの3点はどれも極めて基礎的な内容であり、誰にでも簡単に取り組むことができるものです。今回はこの3点についてそれぞれ解説し、最後には弊社の取り組み事例も紹介します。

1.法令順守点検を実行しよう

 1つ目が法令順守点検を実行しようということです。「法令順守は当たり前のこと。なぜ、法令順守点検が必要なのか」と思われますが、先述の通り法令を順守をしている発電所は少数派です。太陽光発電の保守や点検の方法は、各種業界団体などからガイドラインも発行されていますが、これらは基本的に法令順守を前提とした内容となっています。ですので、改めてその前提となる法令順守点検の部分を着実に実行していく必要があります。

 優良発電事業者を守り、増やすための保安業務の前提として、まず太陽光発電に大きく関わるFIT法と電気事業法の2つの法令について、それぞれ行うべき法令順守点検の項目が異なるという点を理解しておくことが必要です。

 具体的にはFIT法では「標識の設置状態(事業計画、注意喚起)」「近隣対策状況(雑草、土砂流出など)」などを、電気事業法においては「塀・柵の設置状態」「扉などへ施錠状態」「注意喚起の掲示状態」などを点検する必要があります(2つの法律の違いは、後述します)。

 これらの項目を、現場作業が主業務であるO&M会社が、発電事業者と協力しあって確認していくのが望ましいといえます。上記の項目は、発電所の月次・年次点検時に取り組める内容となっていますので、ぜひ実施の検討をお願いしたいと思います。

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