太陽光発電も「スマート保安」の時代へ、その前に理解しておきたい保全業務の種類と違い法令違反を防ぐ太陽光発電の保安ポイント(3)(2/3 ページ)

» 2022年03月29日 07時00分 公開

2-1予防保全:TBM(Time Based Maintenance)/PM(Preventive Maintenance)

 「予防保全」は、メンテナンスを実施している太陽光発電所の保全方法として最も用いられている手法です。

 「予防保全」は、破損・故障の発生後の「事後保全」に対し、月次点検、年次点検、定期点検などの一定期間であらかじめ定めた点検項目に沿って発電所・設備のメンテナンスをおこない、部品交換や補修する方法です。

 この保全は、破損・故障による設備稼働率の低下や運転停止の回避および設備の安定稼働、耐用年数と劣化進行の延長などを目的としています。

2-2 予防保全の課題

 「予防保全」はあらかじめ定めた計画を定期的に実施するため、まだ故障していない機器や設備、それらの部品に対しても画一的な点検・交換・補修を行うこととなり、事後保全よりは費用負担が少ないですが、まだ使える部品でも交換するなどメンテナンスのコストが高くなりやすい傾向があります。

 また、発電所の設計、設備仕様、施工、運営体制などにより設備の劣化・故障の進行速度や程度には箇所によって差が発生するものですが、予防保全は画一的に実施するので、対応が過剰あるいは不十分になるケースもあります。また、発電設備を定期的に全運転停止しなければならないという問題もあります。

3-1 予知保全:CBM(Condition Based Maintenance)/PM(Predictive Maintenance)

 スマート保安の要点である「予知保全」は、リアルタイムのモニタリングデータや、過去の点検データ(ドローン、目視、計測値、修理、修繕などの履歴)などから、発電所の不具合や故障をあらかじめ「予知」し、安全性を高めつつ、発電所を常時監視し最適な状態を維持しながら管理する方法です。故障などの兆候が発現したら早めに対処するため、費用負担が最も低いと言われています。

 太陽光発電所へ導入するには技術開発、制度改正や人材育成などが必要ですが、新たな保全方法として、プラントなど他の産業では先進的な取組として導入が始まっています。太陽光発電にも一部導入されはじめ、将来的に普及が進むと考えられています。

 今後、新たな技術や管理方法も生まれると思いますので、新規の発電所開発にも良い効果が期待できます。これからの保全業務を考える上で、着目すべき動向といえるでしょう。

3-2 予知保全の課題

 「予知保全」には、より高度かつ高効的に測定を行える遠隔監視システムやドローンなど装置や分析ツール、そして結果を二次活用しやすい形でデータ保存できる仕組みが必要不可欠です。これらのコストが、従来の予防保全にプラスして必要になるという費用面での課題もあります。

 スマート保安の普及には、さらなる技術開発やコストダウンと同時に、予知保全と予防保全のすみ分け・整理などが必要と考えています。この点については、2025年の導入に向けた官民連携の取り組みや、さらなるデジタル化の進展によって良い方向に進むのではないかと期待しています。

「事後保全」「予防保全」「予知保全」の比較

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