都市ガスを脱炭素化する「メタネーション」、国内での普及に向けた課題は?エネルギー管理(1/4 ページ)

水素とCO2を原料としたメタン合成技術である「メタネーション」。再エネ電力を利用することで都市ガスの脱炭素化につながるとして、今後の普及拡大が期待されている。メタネーション技術の普及拡大に向けた国内外の動向と、実用化における課題をまとめた。

» 2022年08月18日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 国内の民生・産業部門のエネルギー消費量の約6割が熱需要である。

 このため、カーボンニュートラル実現に向けては電化およびその電力の脱炭素化の推進と同時に、ガス体エネルギーの脱炭素化も不可欠である。

 水素やアンモニアは有力な脱炭素燃料候補とされているが、合成メタンは水素利用の一形態と位置付けられており、いわゆる都市ガス需要のほか、発電分野や輸送燃料等においても、多くの需要が見込まれている。

図1.合成メタンの国内需要想定(2050年) 出所:日本ガス協会

 また第6次エネルギー基本計画においては、2030年までに都市ガスの既存インフラへ合成メタンを1%注入すること、また2050年までに合成メタンを90%注入することが目標として掲げられている。

 このため資源エネルギー庁では「メタネーション推進官民協議会」のもと、合成メタン利用のための環境整備や、国内・海外におけるメタネーション(合成メタン製造)実現に向けた課題を検討してきた。

メタネーションを含む水素利用量の見通し

 都市ガスの原料の大半はメタン(CH4、現在は天然メタン)であり、そのメタンは炭素(C)と水素(H)から人工的に合成・製造することが可能である。

 よって合成メタンは「水素キャリア」(水素を運ぶ媒体)であると同時に、メタネーションは水素利用形態・水素需要の一つであると言える。

 炭素は火力発電所等から回収することや、水素Hは再エネ電力による水電解にて製造することを想定しているが、合成メタンの製造および利用におけるその炭素排出(もしくは環境価値)の帰属は、大きな論点とされている。

 なお水素を利用する場合、専用のパイプライン等の新たなインフラ形成が必要となるのに対して、合成メタンは既存の都市ガスインフラを活用できることが大きな利点とされている。

 2050年に都市ガスの90%を合成メタンに置き換える場合、合成メタンの水素利用量は1,170万トンと試算されている。

図2.水素の国内供給(需要)量・価格目標 出所:海外メタネーション事業実現TF

 また2050年時点の水素価格目標は20円以下/Nm3であり、合成メタンではLNG輸入価格と同水準とすることが目標とされている。

 なお合成メタンの体積当たりの熱量は、水素の約3倍である。

表1.水素・合成メタン等の価格目標 出所:海外メタネーション事業実現TF
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