都市ガスを脱炭素化する「メタネーション」、国内での普及に向けた課題は?エネルギー管理(3/4 ページ)

» 2022年08月18日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

日本国内におけるメタネーション普及の意義

 ボリューム面では海外メタネーションが優勢と考えられるが、国内排出CO2の再利用やエネルギー自給率向上の観点からも、国内メタネーションの普及拡大も同じく重要である。

 国内でのメタネーションは、水素・CO2の調達方法や製造地等に応じて様々なバリエーションが存在するが、代表的な類型としては「A:都市ガス製造所注入型」「B:導管注入型」「C:オンサイト型」に分類できる。

 類型「A」では臨海部の既存の都市ガス製造所で、火力発電から回収されたCO2と輸入水素を合成することにより、大量の合成メタン製造が可能となる。ただし、候補地の数は限定的である。

類型「B」では下水処理場等に由来するバイオガスや再エネ由来水素を活用し、メタネーションを行う。当サイトでのガス需要が無く、他地域での合成メタン利用のため、ガス導管に注入する。

 類型「C」では自社内もしくは近隣でのガス消費を前提とするため、ガス導管の無い地域でも実施可能である。再エネ電力の調達が難しい場合、合成メタンの製造量は限定的となる。

 水素やアンモニア導入促進のため、臨海コンビナートが戦略的拠点として位置付けられているが、合成メタンに関してもコンビナート内での原料(水素・CO2)や製品としての合成メタンの融通利用が期待される。

図6.国内メタネーションの類型 出所:日本ガス協会

合成メタン普及の支援策

 将来的にはLNG価格と同水準を目指すとはいえ、当面の間は合成メタンの価格は高いため、自然体ではその需要はごく限定的であり、ガス事業者等による設備投資も進まないと考えられる。

 海外ではドイツや英国が、水素の導入を政策的に支援するため、価格リスクや量的リスクを軽減する制度を措置している。

 価格リスク軽減策の一つである差額決済制度(CfD:Contract for Difference)は、FIT制度に似た仕組みであるが、基準価格を上回る際には、事業者は超過収益を払い戻すこととなる。

 また量的リスク軽減策として、ドイツでは仲介機関が一旦全量を10年契約で買い取り、それを民間事業者が1年単位で、オークションで必要量を購入する仕組みとしている。

図7.ドイツ・英国の水素導入支援策 出所:水素政策小委員会

 現在、日本でも水素に対する同様の支援策が検討されていることから、水素を原料とする合成メタンで支援策が重複することが無きよう、効率的な支援策を検討する必要がある。

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