課題が顕在化する太陽光発電、JPEAが考える“あるべき姿”と必要な取り組みとは?:太陽光(2/3 ページ)
JPEAはこれまで、法令の改正や制度・施策を検討する国や自治体の委員会等で、太陽光発電の健全な普及・推進のためにさまざまな提言を行ってきた。また「太陽光発電の企画立案/設計・施工/設備運用・管理/設備撤去・廃棄までのライフサイクル全般における法令順守と地域との共生、長期安定稼働を推進するために、自主ガイドラインの策定・公開の他、各種セミナー、研修、技術者資格制度等の運営を行っている」として、3つの例を示す。
長期安定電源としての太陽光発電の健全な普及と、今後拡大が期待されるセカンダリー取引の活性化を図るために、発電事業の継続に関わるリスクを評価するためのガイド(太陽光発電事業の評価ガイド)を、JPEAが事務局となり制定。
- 『太陽光発電の設置や保守点検に関するガイドライン』
設計・施工に関するガイドライン(地上設置型、傾斜地設置型、営農型、水上設置型)や、太陽光発電システムの保守点検ガイドラインの策定に関与。
PVマスター施工技術者及び保守点検技術者制度等による人材育成、保守点検・安全管理等に関する啓発活動を実施。
JPEAでは、太陽光を“あるべき本来の姿”に近づけるためには「事業者による責任ある主体的な取り組みは当然のことながら、関係省庁、自治体、地域住民を含むすべてのステークホルダーによる積極的な関与が不可欠である」として、「これからの取り組み」について次のように取りまとめる。
- 大規模な森林の伐採や土地の改変を伴うような造成費のかかる開発は、事業採算の観点から大きく減少する見込である。課題は、地域との共生の観点でより望ましく造成費を低減すること、荒廃農地・耕作放棄地等の未利用地の活用、そして自家消費型太陽光の推進である。
- これからはFITに依存しない、コーポレートPPA等、需要家が直接関わる事業形態の普及が見込まれ、需要家による監視・チェック体制が機能することで、地域との共生が進むことが期待される。課題は、如何にスピード感をもって、需要家が直接関わる事業モデルの普及を図るかである。
- 地域においては、太陽光発電設備の設置を規制する条例を導入する自治体が増えており、新規案件の開発は従来のように容易ではなくなりつつある。自治体による規制強化と、地域主体の脱炭素化に向けた再エネの導入促進とをどう両立させるかが課題となっている。
- 国の法令に関しては、これを順守できる事業者しか事業に携われない環境となっているが、更なる事業規律の徹底が求められている。
- 例えば、電気事業法の改正により、50kW未満の小規模事業用太陽光発電に関しても「使用前自己確認」が義務付けられ、課題であった地上設置型の小規模太陽光の安全・安心が大きく改善されることが期待される。
- 新規開発案件に対応した「望ましいこれからの取り組み」に関しては、企画立案から設計・施工、運転開始までの期間にフォーカスし、事業者、地域・自治体、国のそれぞれの役割という観点での検討が重要。下表が、JPEAが考えている事例となる。
新規案件に対する今後の取り組み 出典:JPEA
- 稼働済既設案件に関しては、2017年4月施行の改正FIT法の前に認定された設備が多く、地域との共生に関して問題を抱えた案件が存在しており、中には法令順守が疑われる案件もある。これらの設備は、法令の改正だけでは改善が難しく、地域との共生を推進する場合の最大のハードルとなっていると考える。
- 太陽光発電協会では、「地域共創エネルギー推進委員会」を昨年立ち上げて、稼働済み案件の自主保安や施工不良の是正等の推進に取り組んでいる。この取り組みの一環として、昨年夏より全国各地の発電設備(低圧/高圧/特高)の実態調査を実施中であり、調査結果を踏まえ「安心・安全」な設備への是正改善を含めた対応策を検討していく。
- また、稼働済み案件の実態調査において、地域との共生・共創の観点で模範となるような優良な事業者による取組事例をグッドプラクティスとしてとりまとめ、横展開を進めてまいく。
- 稼働済既設案件に対応した「望ましいこれからの取り組み」に関しては、運転開始から、設備運用・管理、設備撤去・廃棄までの期間にフォーカスし、事業者、地域・自治体、国のそれぞれの役割という観点での検討が重要。稼働済既設に関しても、下表に示した事例に対してJPEAは積極的に関与していく。
既設案件に対する今後の取り組み 出典:JPEA
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