2023年度に始まる「長期脱炭素電源オークション」、初回募集は400万kWにエネルギー管理(3/4 ページ)

» 2022年12月08日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

オークション入札価格の算定方法は?

 現行容量市場では、市場支配力を有する事業者が価格つり上げを行うことを防止するため、入札ガイドラインにおいて、応札価格の考え方が示されている。

 長期脱炭素電源オークションでは市場支配力の行使は該当しないものの、国民負担の最小化を図る観点から、全ての事業者を対象に「上限価格の設定」や「入札価格の監視」等により、入札価格に対する一定の規律を設けることとしている。

 初年度募集量400万kW(+LNG専焼で3年間600万kW)は、それなりに大きな規模である。十分な応札量が集まらなければ、各社の入札価格がそのまま約定価格となる。(オークションは、マルチプライス方式で行われる)

 よって長期脱炭素電源オークションでは、その入札価格に織り込むことが可能なコストに関する原則的な算定方法が示されている。

 例えば、発電設備や燃料受入設備等の建設費については、コスト増リスクへの対応として一定の予備費(10%を上限)を織り込むことが認められている。

 入札価格とその内訳は、現行容量市場と同様に、電力・ガス取引監視等委員会による監視対象となる。

 電源投資に関する資本費の一つとして、系統接続費がある。

 電源の建設に当たっては、図4のフローを経て系統に連系することとなるが、系統接続工事に伴い事業者が支払う工事費負担金は、接続検討回答時(図4の1)と契約時(図4の2)に見積額が提示され、工事完了時(図4の3)に精算される。

図4.系統接続のフロー 出所:制度検討作業部会

 発電事業者は、3で工事費負担金額が確定する前にオークションに応札することになるが、実際には、1の見積から3の精算までの間で、金額の一定の上振れ/下振れが生じることとなる。

 このため事業者は、工事負担金見積額の110%の金額を系統接続費として入札価格に織り込むことができることとする。入札価格に織り込んだ系統接続費よりも精算額が低くなった場合は、その差分だけ本制度からの支払額を修正減額される。

 また、落札決定後に2の見積額が非常に高額となった場合、発電事業者は当該事業を断念せざるを得ないことも想定される。この場合は不可抗力事由として取り扱い、市場退出ペナルティを課さないこととする。

 廃棄費用は、運転終了後に発生するコストであるため、入札時点で正確に見積もることは困難である。このため、発電コスト検証における廃棄費用の見積もり方法を参考として、電源種ごとに一定の金額を廃棄費用として織り込むことができることとする。

例えば太陽光発電では1万円/kW、風力等の他の再エネやLNG火力では建設費の5%、原子力では建設費の12%である。

 また発電事業者は入札時点において、将来の本制度対象費用のキャッシュフローベースの支出計画を作成し、税引前WACC(加重平均資本コスト)5%が確保できるような均等化コスト(円/kW/年)と単純平均コスト(円/kW/年)の差額を、事業報酬として入札価格に織り込むことができる。

図5.将来の収入・支出のイメージ 出所:制度検討作業部会

 本稿では説明を割愛した費用項目も多いが、オークション応札時点の各費用項目の算出ルールは原則、表1のとおりである。すべての応札者は入札時点で、入札価格の内訳とその算定根拠を提出する必要がある。

表1.入札価格の算定方法 出所:制度検討作業部会

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