入札が活発化しない需給調整市場 その原因と抜本的な対策とは?エネルギー管理(1/4 ページ)

再エネの導入拡大などに伴い、電力系統の安定化に向け重要性が増している「調整力」。一般送配電事業者がその調達を効率的に行うために開設された需給調整市場だが、入札不足が続いている。この状況を受け、政府では抜本的な対策の検討を開始した。

» 2022年12月20日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 一般送配電事業者が周波数調整や需給調整を行うための調整力を、より効率的に調達・運用するために、需給調整市場が開設された。

 需給調整市場では2021年4月から三次調整力②(以下、三次②)および2022年4月から三次調整力①(以下、三次①)の調達が開始されているが、現在は電源I等の調整力公募も併存する移行期間となっている。

図1.需給調整市場の段階的拡大 出所:需給調整市場検討小委員会

 ところが現在、三次①および三次②においては、募集量に対して応札量が不十分といった慢性的な調達不足が続いている。

 この状況が続く場合、需給調整市場に全面的に移行する2024年度以降、電力系統の安定的運用への懸念や、調整力調達費用の上昇が懸念される。このため電力広域的運営推進機関の「需給調整市場検討小委員会」では、調整力の応札不足に対する抜本的な対策が検討されている。

三次調整力①の概要

表1.三次調整力①の商品要件 出所:需給調整市場検討小委員会

 三次調整力①(三次①)とは、ゲートクローズ以降に生じる需要予測誤差および再エネ発電の出力予測誤差や、電源脱落等に対応する調整力であり、調整力の中では比較的低速な商品である。表1のとおり、応動時間は15分以内、継続時間は商品ブロック時間(3時間)であることが要件とされる。

 必要な調整力を確実に確保するという観点から、一次調整力〜三次①については、卸電力取引(JEPXスポット市場)よりも前の段階(前週時点)で調達されている。エリアにより状況は異なるものの、これまで全国的な三次①の調達不足が継続している。

 なお現在は、調整力公募による電源I・IIを活用することにより、安定供給に支障は生じていない。

 三次①の調達不足の直接的な要因は、そもそも応札量が少ないことであり、地域間連系線容量の制約のため、他エリアの調整力が充分に活用できないことも一因とされている。このため小委員会では、応札量が少ない理由の調査や改善策の検討を行っている。

図2.三次①調達不足量の推移(全国合計) 出所:需給調整市場検討小委員会
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