事務局は、電力需給調整力取引所の取引会員に対してアンケートやヒアリングを行うことにより、事業者の三次①応札量の算定の考え方について調査した。
この結果、週間取引である三次①は受け渡しが翌週であり、想定需要や再エネ供給力の算定の精度が低いことや電源脱落リスクがあることから、事業者は一定の需給変動リスクを考慮していることが明らかとなった。需給変動リスクを大きく見積もれば、それだけ三次①の応札量は少なくなる。
現在、需給変動リスクに織り込む項目や量は事業者により様々であることから、今後一定の指針を示すことにより、事業者の積極的な応札行動を促すこととする。
また需給変動リスクの織り込み以外でも、スポット市場入札量や三次②供出量をあらかじめ控除したうえで、三次①の応札量を算定している事業者が複数存在することが明らかとなった。
この理由はさまざまであるが、例えば「適正な電力取引についての指針」の解釈の違いについては、国がこれを明確化することにより、速やかな解消が期待される。
他方、スポット市場へ供出する方が経済的であるといった理由については、一歩間違えれば「売り惜しみ」に繋がる行為であるため、厳格な監視が必要とされる。
現在、三次①は図4のように毎週火曜日に、土曜日から翌週の金曜日までの取引をまとめて実施する週間取引が行われている。
先述のように、前週の週間取引によるリスクが応札不足の理由であるならば、これをより実需給断面に近づけるスケジュール変更を行うことが対策の一つとなり得る。
他方、発電機等のリソースを現実に調整力として活用するためには、その起動時間等を考慮する必要がある。
火力電源の場合、停止期間が短期(1週間未満)であれば、起動指令から給電運用まで1〜1.5日程度であるのに対して、それ以上の期間(12カ月未満)停止した発電機を起動指令から給電運用を行うためには、2.5〜3日程度要することが報告されている。
なお容量市場が開始される2024年度以降においては、需給逼迫のおそれがあるとき(広域予備率8%以下)には、バランス停止機の自発的な起動準備ならびに相対取引による供給や卸電力市場・需給調整市場へ応札することがリクワイアメントとなる。
起動準備された電源の場合、起動指令の24時間後には約90%以上のリソースが起動可能である。よって三次①を前週時点の週間調達ではなく、前々日あるいは前日断面での調達に変更したとしても、起動特性による制約は限定的であると考えられる。
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