入札が活発化しない需給調整市場 その原因と抜本的な対策とは?エネルギー管理(3/4 ページ)

» 2022年12月20日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

三次①取引スケジュール変更の具体案

 需給変動リスクのもう一つの要因は、FIT再エネ電源の出力変動である。天候に左右される再エネの場合、実需給断面に近づくほど精緻な出力予測が可能となる。

 なおFIT特例制度において現在、一般送配電事業者による出力予測(計画値)の通知が前々日の16時に1回目、前日6時に2回目の通知がされている。

 前日6時のほうが実需給に近いが、通常、事業者は前日6時〜10時の間にはスポット取引の検討・準備を行っており、この時間帯では業務が錯綜すると懸念される。このため三次①の取引時間は、FITの1回目通知(前々日16時)の後に変更することが提案されている。

 なお一部委員からは、三次①の取引時間をスポット市場取引後とすることが提案されており、本件は継続検討とされている。

需給調整市場向け連系線利用枠の拡大

 三次①等の調整力ΔkWを広域的に調達・運用するにあたり、地域間連系線の容量をどのように確保すべきが論点となる。

 三次①は、前週に入札・約定が行われることから、連系線をまたいだ三次①の約定量分だけ連系線容量を確保すると、その分、事後に取引されるスポット・時間前市場で使用できる連系線の容量が減少することとなる。

 このため現在は、三次①を広域的に調達することによるメリットとスポット・時間前取引のデメリットを考慮して、社会便益が最大となる最適な連系線容量を事前に確保している。

図5.三次①向け連系線確保量の上限値設定の考え方 出所:制度設計専門会合

 現在、調整力のための連系線利用枠は連系線容量の「マージン」として取り扱われており、需給調整市場はその範囲内で取引が行われている。

ところが図6のように、想定される潮流が調整力ΔkWの約定の方向と反対方向の場合、実際に使用できる連系線容量は大きくなると考えられる。現在の調整力取引ではこの想定潮流が考慮されていないため、想定潮流に対する相殺分を加味した場合、調整力取引に使用可能な連系線容量が増加することとなる。

図6.連系線の潮流方向を意識した利用枠の拡大 出所:需給調整市場検討小委員会

 なお、連系線の計画潮流が確定するのは時間前市場の取引後であるが、三次①の週間取引時点ではスポット市場や時間前市場の取引前であり、計画潮流は未定であるため、これを想定潮流とすることができない。このため三次①の週間取引時には、過去実績を元にした想定潮流を設定することとする。

 なお、想定潮流より実際の潮流が少ないことや反対方向となる場合は、三次①約定量の一部が実需給断面において融通できなくなるといったリスクも存在する。このリスクを極力低減する観点から、過去3ヵ年の潮流実績の3σ相当値(99.87パーセンタイル値)を算出したうえで、全て同一方向となる連系線を対象に、最小値を想定潮流値とする。

 この場合、東北−東京間(東北向き)、関西−中国間(関西向き)、中国−九州間(九州向き)の3つの連系線(方向)が想定潮流の設定対象となることが明らかとなった。

 なお現在、卸電力取引の大宗はスポット市場が占めている。このため三次②のような前日取引の場合、時間前市場取引前であるため計画潮流は確定していないものの、スポット市場の約定結果をもとに想定潮流値を算出することとする。この場合、週間取引時と異なり、すべての連系線を対象に利用枠拡大が可能となる。

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