一方、日本の場合は、土地面積の問題から、大型太陽光発電の開発ポテンシャルがほとんどなく、加えて原子力発電も厳しい状況であることは周知の事実である。そのため、脱化石燃料においては、洋上風力発電の活用が期待されるが、大規模導入に向けては、漁業などへの影響と低コスト化の実現という課題に直面している。
日本はそれほど大きくない国土面積に対し、人口は世界第11位と多い国である。図2で示した②の発電から⑤の販売〜消費まででいうと、日本は高度な工業化が進んでおり、消費が盛んで生活水準も高い。それに伴うかたちで日本のCO2排出量は多く、世界全体の3.1%(2021年時点、10億5,370万t)を占めており、中国、アメリカ、インド、ロシアに次ぐ第5位と上位に位置している。
一方、日本のエネルギー資源は輸入に依存しており、発電に用いる化石燃料(CO2主要排出先)の割合は71.7%(2021年時点)を占めている。日本の発電効率や生活・生産活動における省エネ技術は非常に優れているものの、前述のとおり、欧米のようにグリーンエネルギー(再エネや原子力)拡大によって脱炭素化に大きなインパクトをもたらすことはできない。
また、④の移動・物流においては、モビリティ電動化によるCO2排出量低減は期待できるが、図4で示すように、CO2排出量はライフサイクルアセスメント(LCA)の観点で考えなければならない。近年の国際的な基準においては、原材料調達〜部品・蓄電池・自動車製造〜走行〜廃棄に至るまで、サプライチェーン全体におけるCO2排出量の削減度合いが評価される。そのため、日本は化石燃料による発電の割合を減らさない限り、サプライチェーン全体におけるCO2排出量削減を実現することが難しい状況にある。
このような日本が置かれている状況を鑑みても、カーボンリサイクルは日本のカーボンニュートラル達成という目標において、非常に重要な脱炭素化手段の一つであるといえる。
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