“脱炭素経営”の加速で「排出量の見える化」に脚光、関連ツールが続々登場脱炭素経営EXPO(1/2 ページ)

企業活動に伴う温室効果ガス排出量の削減に向けて、「排出量の見える化(算定・可視化)」が喫緊の課題となっている。昨年、上場企業に対してTCFD提言に基づく情報開示が実質義務化され、対応に追われているところも少なくない。東京ビッグサイトで開催された「脱炭素経営EXPO」において、排出量見える化ソリューションの最新動向を探った。

» 2023年03月29日 07時00分 公開
[廣町公則スマートジャパン]

 気候変動対策の視点を織り込んだ企業経営、いわゆる“脱炭素経営”への取り組みが加速している。気候変動対策が、CSR活動の一環で済まされていた時代はとうに終わった。経営上の重要課題として、気候変動対策に全社を挙げて向き合う企業が急増している。

 2022年4月の東京証券取引所の市場再編に伴い、最上位市場であるプライム市場に上場する企業には、気候変動に関するリスク情報の開示が実質的に義務づけられた。国際イニシアチブ「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)」の提言に沿った情報開示を求めるもので、上場企業にとって気候変動対策は待ったなしの状況となっている。この義務化は先進諸国に歩調を合わせたものでもあり、将来的にはより多くの企業に開示が求められると予想される。

 TCFDでは、ガバナンス・戦略・リスク管理・指標と目標の4項目について、気候変動に関する影響を、投資家を含むステークホルダーに対して開示することを提言している。これを実現するためには、まずは自社関連の温室効果ガス排出量を正確に把握することが重要であり、温室効果ガス排出量の算定・可視化が喫緊の課題となっているのだ。

 2023年3月15〜17日に東京ビッグサイトで開催された「脱炭素経営EXPO(スマートエネルギーWeek春)」においても、温室効果ガス排出量の可視化を軸としたサービスを展開する出展企業が目立った。ここでは、その中からゼロボード、NTTデータ、三井住友銀行、booost technologies、アスエネのソリューションを紹介する。

盛り上がりを見せた「脱炭素経営EXPO(スマートエネルギーWeek春)」(2023年3月15〜17日、東京ビッグサイト)

ゼロボード/簡単操作で温室効果ガスの排出量を見える化

 ゼロボードは、温室効果ガス排出量を算定・可視化するクラウドサービス「zeroboard」を展開する。これまで2200社以上への導入実績があり、顧客フィードバックに基づく操作性には定評がある。zeroboardは、アンケート形式の質問に答えながら活動量を入力していくことで、温室効果ガス排出量の算定が可能だ。膨大なデータ処理が必要なサプライチェーン全体の排出量や、製品・サービスごとの排出量の算定もできる。

 算出された排出量は瞬時にグラフ化される。排出量の削減管理や費用対効果のシミュレーション、外部機関に報告するためのレポート機能も有している。報告にあたっては、GHGプロトコルなどの国際的な開示形式に加え、国内外の各種環境法令に合わせた報告形式での出力ができる。

 同社は現在、金融機関や地方自治体、エネルギー会社、商社など多岐にわたる企業との業務提携を進めている。それらパートナー企業と構築するエコシステムを通じて、温室効果ガス排出量見える化の先にある、より大きな事業機会を捉えていきたい考えだ。

NTTデータ/総排出量配分方式によりサプライヤーの削減効果も反映

 NTTデータは、温室効果ガス排出量可視化プラットフォーム「C-Turtle」を打ち出す。企業が自社の温室効果ガス排出量を可視化する際に用いる算定方法には主に2種類あるが、「活動量(調達した製品の購入額・数)」×「排出原単位(その製品ごとに決められた固定の排出量(業界平均値))」の形で算出する方法が一般的だ。しかし、算定に利用される業界平均値では、取引先のサプライヤーが個別に排出量削減を実施したとしても、その削減効果を自社の間接排出量の算定結果に反映しづらいという課題があった。

 もう1つの方法は、業界平均値を用いず、「活動量(サプライヤー別の取引額)」×「サプライヤー別排出原単位(サプライヤー別の売上高あたりの排出量の割合)」で排出量を算定する総排出量配分方式だ。「C-Turtle」は、この総排出量配分方式に対応した可視化プラットフォームであり、サプライヤー各社の排出量削減努力を反映でき、サプライチェーン全体のつながりを生かした効率的な排出量算定・削減が可能なものとなっている。

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