現在、供給信頼度基準としてはEUE(停電量の期待値)が用いられており、エリア毎の停電予測量が年間EUE基準(0.048kWh/kW・年、沖縄エリアは0.498kWh/kW・年)より「小さい値」であれば、年間を通じて従来と同じレベルの供給信頼度があると言える。
近年、毎年のように夏冬の電力需給逼迫が生じているが、短期断面では2023年度の東京エリアにおいて、7・8・11月を中心に供給力不足が生じ、基準値(0.048kWh/kW・年)を超過している。これは、1年間における停電時間に換算すると、約3分に相当する。
また長期断面でも電源の休止等により、北海道や東京、九州、沖縄で基準値を超過する年度が発生している。
2024年度以降は、容量市場による供給力提供が開始されるにも関わらず、複数のエリアで供給信頼度基準を超過する理由は以下のように考えられている。
出力10万kW以上の発電設備(主に火力・水力)に対しては、需給バランスが厳しい期間・エリアにおける補修計画の変更や新規補修計画を回避するよう、広域機関からすべての発電事業者へ協力が要請されている。この結果、2022年度供給計画と比較すると、2023年度夏季(8、9月)・冬季(12〜2月)の補修量は減少した。
年間EUE基準による評価のみでは、電源の停止計画等によって供給力に偏りが生じた際に、特定の断面で予備率が低くなることを把握することが難しいため、補完的に、従来手法である各月の「予備率」も確認している。
予備率の算定にあたっては、地域間連系線を活用して予備率が高いエリアから低いエリアへ、各エリアの予備率を均平化するように連系線の空容量の範囲内で供給力を振り替えする。
また、供給計画には未計上であるものの、近い将来に運転開始が予定されている電源もあると考えられる。そこで、環境影響評価(環境アセス)公表情報に掲載されている電源開発計画のうち、すでに一般送配電事業者に系統アクセス契約申込がなされ、電気事業法第48条(工事計画)の規定に基づき届出がなされている電源は、近い将来に稼働の蓋然性が高いと判断して、供給力に加算した。
この結果、2023年度は、全てのエリア・月で予備率8%を上回り、必要供給力を確保できる見通しとなった。
ただし、厳気象H1需要(過去10年間で最も猛暑となった年度並みの気象条件)に対する予備率を見ると、東京エリアでは7月が3.0%、8月が3.9%であるほか、稀頻度リスク(N-1相当の事象)に対する供給力を確保できていない。このため東京エリアでは、2023年度夏季を対象に、追加供給力公募(kW公募)を実施することとした。
2023年度の供給力(kW)の補完的確認のため、図3において、小売電気事業者の想定需要に対する「未確保分」と発電余力等の「市場供出期待分」を比較すると、全ての月において、市場供出期待分が未確保分を上回っていることが確認された。
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