太陽光パネルの廃棄が課題に、急がれる再エネ設備の廃棄・リサイクル制度設計太陽光(1/4 ページ)

太陽光発電を中心に国内に導入が広がった再エネ発電設備。将来の課題として指摘されている、設備の適切な廃棄・リサイクルの仕組みづくりに向けて、政府が検討会を立ち上げた。本稿では第1回検討会の内容を紹介する。

» 2023年05月11日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 FIT制度開始以降に導入された太陽光発電は、住宅用で177万件・853万kW、非住宅で68万件・5,200万kWに上る(いずれも2022年3月末時点)。

 これらの大量に導入された太陽光パネル等は、いずれかの時点で廃棄物として排出されることになるが、NEDOによる推計では、2035〜2037年頃に排出量のピークを迎え、年間17〜28万トン程度、産業廃棄物の最終処分量の1.7〜2.7%に相当する量と予測されている。

図1.太陽光パネルの排出量の予測 出典:NEDO

 太陽光パネル等の発電設備の廃棄処理の責任は、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)」等により発電事業者にあるものの、一部では不適切な管理状態にある事案も報告されており、将来の廃棄等に対する地域住民の懸念が高まっている。資源エネルギー庁の「情報提供フォーム」において、相談件数全体の約9割を太陽光発電に関するものが占めている。

図2.情報提供フォームにおける主な相談内容(2023年3月時点) 出典:再エネ発電設備の廃棄・リサイクル検討会

 このため、資源エネルギー庁と環境省の共同で「再生可能エネルギー発電設備の廃棄・リサイクルのあり方に関する検討会」が設置され、太陽光や風力等の再エネ発電設備の廃棄・リサイクルに関する対応の強化に向けた検討が開始された。

太陽光パネルの構造と含有物質

 現在、市場の大宗を占めるシリコン系の太陽光パネルは、フレーム(アルミ)、ガラス、封止材、太陽電池セル(シリコン)、バックシートといった部品に大別され、リサイクル工場では、これらの部品を分離し、それぞれ素材利用を行っている。

図3.太陽光パネルの主な構造 出典:再エネ発電設備の廃棄・リサイクル検討会

 また、含有可能性がある有害物質は太陽光パネルの種類ごとに異なるが、鉛、セレン、カドミウム、ヒ素の4種類がある。

 シリコン系パネルであれば、ほぼ全ての中間処理事業者で処理できるが、化合物系パネルについては事業者によって対応状況が異なるため、含有物質の情報が必要となる。また最終処分事業者においては、浸出水等への影響から、含有物質情報がない場合は搬入を断っているケースがあるため、含有物質の「量」に関する情報も必要となる。

 このため現行の太陽光発電の「事業計画策定ガイドライン」において、発電事業者から廃棄物処分業者に対して、含有物質の情報を適切に提供することを求めているが、具体的な時期、内容、対象については定められていない。

 検討会では、今後、パネル含有物質の情報登録をFIT/FIP認定基準に追加する等、再エネ特措法の省令改正について検討を行う予定としている。

図4.主な太陽光パネルの種類と含有物質 出典:再エネ発電設備の廃棄・リサイクル検討会
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