太陽光パネルの廃棄が課題に、急がれる再エネ設備の廃棄・リサイクル制度設計太陽光(4/4 ページ)

» 2023年05月11日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]
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風力発電(大型風車)の廃棄・リサイクル

 風車が大型化する中で、洋上風力に関しては、再エネ海域利用法に基づく公募占用指針において、事業終了後の原状回復や撤去費用の確保を求めている。

 なお、陸上風力撤去時の「地下工作物」の取り扱いについては、原則、原状復帰とした上で、日本建設業連合会のガイドラインに基づいた対応を実施するとともに、一定の条件を満たすものについては地中に存置して差し支えない、としている。

図8.大型風力発電の設備撤去の流れ 出典:再エネ発電設備の廃棄・リサイクル検討会

 大型風力発電は、複数基の風車による発電事業が大半であるため、発電終了後、多量の大型部材を一度に廃棄あるいはリサイクル処理する必要があり、廃棄のロジスティクスという観点で、計画的な廃棄・リサイクルが求められる。

風力発電設備のリサイクルにおける課題

 これまで一般的であった2MWクラスの風力発電設備の場合、全体としては、基礎に使用されるコンクリートが重量の8割を占めている。基礎を除くと、風車本体の素材の約9割が、鉄や銅、アルミニウム等の金属であり、大部分については、すでにリサイクルルートが確立している。

 他方、残り1割を占めるブレードはガラス繊維強化プラスチック(GFRP)であり、その頑丈さゆえにリサイクルの難しい素材である。現在、GFRPは破砕後、燃料として製紙メーカー等に売却(サーマルリサイクル)し、その残渣は最終処分されている。

 ベスタス社(デンマーク)では、再利用困難とされてきたエポキシ樹脂を化学的に分解する技術を産学連携プロジェクトにより開発し、今後ブレードのリサイクルを行っていく予定としており、2040年までに廃棄物ゼロのブレードをリリースすると発表している。

 検討会では海外動向も踏まえ、どのようにGFRPのリサイクルを進めていくか、検討を行う予定である。

図9.風車のリサイクル・処理フロー 出典:再エネ発電設備の廃棄・リサイクル検討会

小形風力発電の現状と課題

 小形風力発電(20kW未満)では現在、約7,000件・約13万kWのFIT認定があるが、そのほぼすべてが、調達区分(価格)が変更された2017年度以前の案件である。

 このため小形風車においては、長期間稼働しておらず適切な管理がなされていない風車の存在も指摘されており、まずは事業実態を把握した上で、関係法令の適用について明確化する必要がある。

 小型とはいえ20kWであれば、風車直径は16m程度、風車高さは30m程度(10階建てマンション程度)と、それなりに大きな設備となる。

 風力発電の「事業計画策定ガイドライン」においては、事業者に廃棄等費用の適切な確保のための計画的な積立を促しており、設備の撤去義務や不法投棄に関する罰則等に関する関係法令を明記し、廃棄の徹底が促されている。

図10.風力発電設備の維持・廃棄に関連する規制 出典:再エネ発電設備の廃棄・リサイクル検討会

 発電事業が終了し、電気事業法に該当しない設備であっても、高さ15m以上の設備であれば、建築基準法の工作物に該当する。放置することで保安上危険となる場合、都道府県知事が除却、修繕等の措置を勧告・命令し、この勧告・命令に違反した場合、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科される。

今後の検討課題

 検討会では太陽光、風力発電のほか、中小水力・バイオマス・地熱発電設備についても、適切な廃棄やリサイクルの在り方を検討する予定としている。

 また近年、太陽光発電に限らず、非FIT/非FIPの案件が増加している。これらについても、どのように含有物質情報を把握するか、適切な設備廃棄やリユース・リサイクルを促すか、早期の検討が求められる。

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