太陽光パネルは「N型」が主流に、次世代モジュールの覇権争いが本格化太陽光(1/3 ページ)

太陽光パネルの技術トレンドが、ここにきて大きく変わってきた。世界シェア上位のパネルメーカーのほとんどが、主力製品を「P型」から「N型」に移行しようとしているのだ。先頃、東京ビッグサイトで開催された「PX EXPO」でも、初披露となったモジュールの大半がN型だった。

» 2023年04月24日 07時00分 公開
[廣町公則スマートジャパン]

 発電効率の追求とコストバランスのせめぎ合いのなかで、「多結晶から単結晶」へ、そして「セルの大型化」、「PERC技術の採用」など、太陽光パネル業界にはこれまで何度か技術トレンドの変容があった。いま起きている「P型からN型へ」の移行も、これからの市場に大きな影響を与えていくことになるだろう。

 そもそもP型・N型とは、結晶シリコン太陽電池モジュールのセルを構成する半導体の種別だ。これまでは、主にコスト的な要因から、市販されるモジュールのほぼすべてで、P型セルが採用されてきた。しかし昨今、P型セル太陽電池モジュールによる変換効率の追求が限界に近づき、これを超える次の一手が求められていた。

 そこに登場してきたのが、N型セルだ。N型セルは、P型セルでは発電できないような低照度でも発電可能であり、しかも高温時の発電量低下が少なく、劣化しにくいなどのメリットをもつ。最大出力が同じスペックだったとしても、原理的にP型よりN型の方がより多くの発電量を得ることができるのだ。そのことは以前から分かっていたが、N型セルは製造コストも高くついたため、N型セルを用いた太陽電池モジュールの商品化は進んでこなかった。

 しかし、2022年には、太陽光パネル上位メーカーの多くがN型モジュールの製品化を発表。2023年中には、主要製品ラインアップをP型モジュールからN型モジュールに順次切り替えてくことを表明している。それぞれの製品の特徴は、どこにあるのか──各社の動向を整理する。

多くの「N型モジュール」が披露された「スマートエネルギーWeek 2023」

ジンコソーラー/N型TOPConの変換効率26%超へ

 N型にも、いくつかの技術的タイプがある。ジンコソーラーが追求しているのは、N型TOPCon(Tunnel Oxide Passivated Contac)技術だ。2021年10月に、従来サイズのN型TOPConセルで世界最高の変換効率25.4%を実現するなど、早くから研究開発に取り組んできた。2022年12月には、大型化した182mm角のN型TOPConセルで最大変換効率26.4%を達成し、世界記録を更新した。現在の最新シリーズである「Tiger Neo」は、この182mmN型TOPConを量産化したモデルであり、変換効率は23.23%となっている。

 同社は、「太陽光発電技術の革新と信頼性の高いソリューションの開発にフォーカスし、研究開発チームはバルクデフェクトパッシベーション技術、新型ポリシリコンコンタクト、金属シリコン界面再結合抑制技術など、様々な先端な技術を開発し、大型太陽光電池の変換効率26.4%を実現した。研究室での変換効率のブレークスルーは、当社の量産の基礎となる。変換効率のさらなる進歩とコスト削減のロードマップに基づいて、より高効率、より信頼できる、より経済性がある商品を提供できると信じている」と述べている。

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