太陽光パネルの廃棄が課題に、急がれる再エネ設備の廃棄・リサイクル制度設計太陽光(2/4 ページ)

» 2023年05月11日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

太陽光パネルのリサイクルの流れ

 現在、廃棄された太陽光パネルに関して事業者によるリサイクル義務はなく、廃棄物処理法に則って適正に処理することが求められる。また循環型社会形成推進基本法に基づき、「1.発生抑制(リデュース)」「2.再使用(リユース)」「3.再生利用(リサイクル)」「4.熱回収」「5.埋立処分」の優先順位に沿った対応が必要である。

 廃棄物処理法上、太陽光パネルは産業廃棄物に該当し、産業廃棄物の品目上は、「金属くず」、「廃プラスチック類」及び「ガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くず」の混合物として取り扱われる。

 現行法では、どこまでのリサイクルを実施するかは事業者の判断に委ねられており、高度選別リサイクルのほか、単純破砕処理も行われている。図5は高度選別リサイクルの流れであるが、アルミやガラス、金属の大半はリサイクルが可能である。

図5.高度選別リサイクルの流れと重量比率 出典:再エネ発電設備の廃棄・リサイクル検討会

 リユースされない使用済み太陽光パネルは、太陽光発電設備の解体工事という事業活動によって排出されるものであるため、解体工事事業者が廃棄物処理法上の排出事業者に該当する。

 一般的に太陽光パネルは20年以上の使用が可能であるため、現時点での太陽光パネルの解体・撤去工事はまだ少なく、環境省の調査によれば、直近3カ年で使用済み太陽光パネルの解体・撤去工事を受けたことがある解体工事業関係事業者は約15%に留まっているが、その件数は増加傾向にある。

使用済太陽光パネルの排出要因・処分方法

 環境省は事業者(中間処理事業者、埋立処分事業者)に対し、使用済太陽光パネルの排出要因・処分方法に関するアンケート調査を実施した(2020年度、2021年度)。

 現時点、「目的を終了した」パネルの回収量はわずかであるため、各年度の災害の発生有無により、使用済太陽光パネルの排出量・回収量は大きく(10倍以上)増減する。これに伴い、リユース量・比率も大きく変動することとなる。

 他方、リサイクル「量」や最終処分「量」は、2020年度と2021年度で大きな増減は見られない。災害が少なく、パネル回収量が2,257トンと少なかった2021年度には、最終処分量(277トン)が回収量の12.3%を占めることとなった。

図6.使用済太陽光パネルの排出要因・処分方法(2020年度) 出典:再エネ発電設備の廃棄・リサイクル検討会

 現在、太陽光パネルの産廃処理費用は2円/W程度であるのに対して、マテリアルリサイクル(分解処理)コストは3円/W程度と高コストであるため、リサイクルの推進に向けて更なる技術開発等が必要とされている。

 環境省では、「太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン」において、使用済太陽光発電設備の解体・撤去、リユース、収集・運搬、リサイクル、埋立処分、被災した太陽光発電設備の取扱いをまとめているほか、「太陽電池モジュールの適切なリユース促進ガイドライン」では、リユース可能な例や、より正確な性能を把握するための検査例を掲載している。

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