川崎市が新築建築物に太陽光パネル設置を義務付ける条例改正を実施。東京都に続く新たな設置義務化条例として注目されている。本稿ではその制度概要と、東京都版の制度との違いなどを解説する。
川崎市は、住宅等の新築建築物に太陽光パネル設置を義務付ける、「川崎市地球温暖化対策推進条例」を2023年3月に改正した。
川崎市の温室効果ガス(GHG)排出量は2,139万トン(2019年度)であり、政令市では最大の排出量となっている。このため川崎市では、2050年までにGHG排出量の実質ゼロ、2030年度までに50%削減(2013年度比)の目標を掲げており、2030年度の再エネ導入目標は33万kW以上としている。
川崎市の2020年度再エネ導入量は約20万kWであり、BaU(成り行き)では2030年までに6.5万kWの新規導入が見込まれているが、目標33万kWの達成には追加的措置が必要とされている。
この実現に向けて、中小規模・大規模のすべてをカバーする4つの制度から構成された「建築物太陽光発電設備等総合促進事業」を開始することとした。
川崎市は約9割が市街化されており、2050年までに新規導入可能な再エネの約99%が住宅用・事業用の太陽光発電設備と想定されている。これから新しく建てられる建築物のほとんどが2050年にストックとして残ることを踏まえ、義務的手法を導入することにより、住宅用・事業用建築物への太陽光発電設備の導入施策を強化していくこととした。
なお本稿では参考情報として、東京都の「環境確保条例」における「建築物環境報告書制度」との共通点・相違点についても触れることとする。
住宅等の中小規模建築物への太陽光パネル設置の義務化は、2025年4月の施行を予定している。結論を先取りすれば、本制度において太陽光発電設備の設置義務が課されるのは、後述する「特定建築事業者」であって、住宅の建築主・個人ではない。よってこの制度の名称は、「特定建築事業者太陽光発電設備導入制度」とされている。
本制度の対象となる建築物は、延べ床面積2,000m2未満の中小規模建築物であり、これは川崎市内の建築物の約99%を占めている。なお、増築では駐輪場など実質的には太陽光発電設備の設置に適さない多様な形態があるため、新築建築物のみが対象である。
建築事業者が設置義務者である点、2,000m2未満の新築を対象とする点は、いずれも東京都の制度と共通である。
本制度の対象者(特定建築事業者)は、制度対象建築物(2,000m2未満の新築)を「市内に年間一定量以上、建築・供給する建築事業者」とする。現時点、この「一定量」の具体値は未定であるが、「5,000 m2以上」が例示されている。この場合、対象事業者は23社となり、川崎市全体の56%(戸建住宅においては60%)がカバーされる。(2020年度)
国は第6次エネルギー基本計画において、「2030年に新築戸建住宅の6割に太陽光発電設備が設置されていることを目指す」と掲げており、川崎市ではこれと整合的な水準としている。
なお、川崎市制度の対象となる再エネ設備は、太陽光発電設備に限定される。東京都制度では太陽光発電のほか、太陽熱や地中熱の利用設備も対象である。
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