川崎市も太陽光発電の設置を義務化へ!東京都との違いと制度の詳細を解説太陽光(2/5 ページ)

» 2023年04月19日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

太陽光発電設備の設置義務量

特定建築事業者による太陽光発電設備の設置基準量は、以下の計算式により算定される。

 「年間供給棟数」×「棟当たり基準量 (kW) 」×「算定基準率 (%) 」

 素案では、計算式の棟あたり基準量は2kW、算定基準率は70%、とされている。これは、建築主の意向や土地形状等の事情により、太陽光パネルの設置ができない(不向きである)ことを踏まえ、個々の建築物ではなく全体として設置基準量の達成ができればよいとする考え方である。

 なお足元ではFIT制度による太陽光発電設置容量の平均値は4kWを超えており、基準量2kWは、かなりの余裕をもった数値であると言える。

 東京都の制度では、細やかな補正や除外規定が設けられているのに対して、川崎市の現時点の案は、比較的シンプルな制度とされている。

 市内で供給する住宅が年間100棟である特定建築事業者の場合、再エネ利用設備設置基準量は140kWとなる。よって、どのような組み合わせであれ、合計140kW以上を設置することにより、義務を果たすこととなる。

 図2の例の場合、100棟中45棟において太陽光パネルの設置が無くとも、義務量を果たす(=基準に適合する)ことが分かる。

図2.対象事業者の基準適合イメージ 出所:川崎市

 なお川崎市の制度では、物理的に太陽光パネルの設置が困難な場合などは、一定の「代替措置」を検討する予定としている。代替措置としては、オフサイトPPAや、非化石証書によらない再エネ電源調達など、再エネ電源の新規導入に寄与した取組が想定されている。

 ただし図2のように、太陽光パネルの設置がゼロの棟数が半数程度あったとしても義務量達成は可能であるため、特定建築事業者による新築住宅の大半で「物理的に太陽光パネルの設置が困難」という特殊なケースでのみ、代替措置が適用されると考えられる。

 また本制度では、義務対象者と住まい手が異なるため、代替措置をとることが困難である場合に備え、除外規定を設けることも検討する。

 なお東京都の制度では代替措置として、事業者が過年度に供給した都内住宅・建築物(既設物件)に限り、当該年度に新たに設置した太陽光発電を義務履行の一部として計上することができる。

 本制度はあくまで義務的措置であるため、仮に特定建築事業者が代替措置や除外規定を考慮しても義務を履行できなかった場合、市は行政指導を通じて、当該事業者に対して義務履行に向けた助言を行う。また長期間にわたり履行状況に改善が見られない場合、当該事業者に対して勧告やその公表を行うことにより、適正な履行を促すこととしている。

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