川崎市も太陽光発電の設置を義務化へ!東京都との違いと制度の詳細を解説太陽光(4/5 ページ)

» 2023年04月19日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

大規模建築物への太陽光発電導入制度

 全国推計(2013年度)によれば、延べ床面積2,000m2以上の大規模建築物は、建築物着工件数の約1%であるにも関わらず、そのエネルギー消費量は建築物全体の4割を占めるなど、建築部門全体のエネルギー消費量に与える影響が大きい。

 このため川崎市では、中小規模建築物だけでなく、延べ床面積2,000m2以上の大規模建築物(特定建築物)に対して、「特定建築物太陽光発電設備等導入制度」のもと、太陽光等の再エネ設備の設置を義務付けることとする。

 中小建築物では義務者は建築事業者であるのに対して、大規模建築物ではこれを新築・増築する建築主とする。

 また本制度では、基準量の算定対象とする再エネ設備は、太陽光発電に限らず、太陽熱利用設備、バイオマス利用設備、風力発電設備、地中熱利用設備なども対象とする。義務対象者が設置しなければならない再エネ設備の設置基準量は、延べ床面積と建築面積を考慮し、特定建築物の規模に応じた設置基準量を設定する。

 現時点の基準量のイメージは以下のとおりであるが、今後、技術的見地からの意見を踏まえて検討する予定としている。

 大規模建築物向けの本制度においても、物理的に再エネ設備の設置が困難等の場合には、オフサイトPPAや非化石証書によらない再エネ電源調達といった、代替措置を検討する。ただし、大規模な特定建築物は、環境負荷に対する社会的責任が大きいため、除外規定は設けない予定である。

 本制度についても、仮に建築主が義務を履行できなかった場合、市は行政指導や助言、勧告、公表を行うことにより、適正な履行を促すこととしている。

再エネ義務制度の導入により期待される効果

 大規模建築物を対象とした「特定建築物太陽光発電設備等導入制度」、中小規模を対象とした「特定建築事業者太陽光発電設備導入制度」、大小両方を対象とした「建築士太陽光発電設備説明制度」、これら3つの「再エネ義務制度」の導入により、年間4,600kW程度、2025〜2030年度の累計で、2.5万kW程度の再エネが導入されると試算されている。

 ただしこれは、2030年度目標達成に必要とされる6.5万kWの約4割に過ぎない。

図5.再エネ義務制度導入の効果試算 出所:川崎市

 川崎市ではこれ以外に、「1.地域エネルギー会社の設立による民間向けの再エネ設備導入(約0.4万kW)」、「2.設置可能な市公共施設への太陽光発電設備の導入(約0.6万kW)」、「3.脱炭素先行地域での民間施設の再エネ設備導入(約0.5万kW)」の取り組みを進める予定としているが、これらの取り組みによる導入量を加えても、目標の達成には届かない状況である。

 現時点、この不足分をどのように補うかは明らかにされていないが、3つの義務制度の強化(目標値の上乗せ)もしくは別の新たな制度が必要になると考えられる。

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