風車を止めずに損傷を検知、NTTがドローンを活用した点検手法を開発自然エネルギー

NTTが風力発電用風車の無停止点検を実現する技術を開発。2機のドローンを点検対象構造物を挟み込む形で飛行させ、風車を稼働させたまま損傷などの点検が可能だという。

» 2023年05月16日 14時45分 公開
[スマートジャパン]

 NTTは2023年5月15日、風力発電用風車の無停止点検を実現する技術の実証実験を開始したと発表した。2機のドローンを点検対象構造物を挟み込む形で飛行させ、風車を稼働させたまま損傷などの点検が可能だという。

 今回実証する技術は、無線局免許不要の微弱無線を使用し、その送受信間の受信信号の変化により、送受信間にある構造物の損傷有無を検知するもの。この技術を2機のドローンに搭載し、微弱無線の送信機と受信機として飛行させる。上空で微弱無線の送受信間に損傷有無を検知する対象物以外の遮蔽物、反射物が無い状態をつくり、対象物の軽微な変化を把握しやすくする。風車停止状態で行う画像撮影・解析などすでにある技術を使った点検の前段階で使用し、運転停止基準の判断に用いるという想定だ。

開発した技術のイメージ 出典:NTT

 NTTではこの技術を利用し、まずノイズ影響の少ない実験室でフレネルゾーン(無線送受信の距離と周波数によって決まる無線が伝搬する空間)内の受信信号の変化を検知する屋内実験を行った。風力発電設備のブレード点検ガイドラインに記されている3つの状態と正常状態を比較することで、回転中のブレード損傷の状態を判断できるかどうかを検証した結果、運転に影響する計画的に補修を行う状態と、保安停止を要する状態の損傷有無を検知することに成功したという。

屋内における実験の結果 出典:NTT

 さらに、2機のドローンを微弱無線の送信機と受信機に見立て、上空で微弱無線の送受信する屋外実験を行った。ドローンで上空を飛行する際にはノイズの影響を強く受けるが、その対策も行い実験を行った結果、上空30メートルでの微弱無線送受信に成功。2機の自律飛行ドローンの操作により、上空で微弱無線の送受信距離を意図通りに変化させて、フレネルゾーンを簡単に変更できることも確認できたとしている。

屋外実験の様子 出典:NTT

 この技術ではソフトウェア無線を活用しているため、送受信周波数を簡単に変更できる他、上空で自由に周波数の電波を変化させながら送受信を行うことが可能だという。これにより周波数と送受信距離によって決まるフレネルゾーンを検知対象の構造物に合わせて変化させることができる。

 NTTでは今後、この技術確立に向けて、実際に屋外で運転中の複数の風力発電風車で実験を行い、屋外の実物でも損傷検知が行えることを確認する計画だ。

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