問題視されるLPガス業界の商習慣、是正に向けた制度改正の内容が具体化法制度・規制(1/4 ページ)

集合住宅における機器の「無償貸与」や、建売住宅における「無償配管」などの商習慣が問題視されているLPガス業界。資源エネルギー庁ではこれらの問題の解決に向けて、制度改正の具体的な内容の検討を開始した。

» 2023年05月18日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 LPガスは全国の約4割、2,200万世帯の家庭用燃料として利用されており、国内需要量は年間1,300万トン前後である。LPガスの販売は「液化石油ガス法」(液石法)に基づき、自由な参入(登録制)や、自由な料金設定が可能であり、LPガス事業者数は約1万7,000社に上る。

 LPガスでは、これまで料金の不透明性や取引方法に対する問題点が指摘されており、全国の消費生活センターや国民生活センターに寄せられたLPガスに関する苦情相談件数は、年間2,000件前後で推移している。

 このため、資源エネルギー庁の「液化石油ガス流通ワーキンググループ(WG)」では、主に集合住宅における機器の「無償貸与」問題や、建売住宅における「無償配管」問題の現状と課題解決に向けた検討が進められている(参考記事:LPガス業界の取引適正化へ制度改革を検討、問題視されている商習慣とは?)。

「無償貸与」や「無償配管」はどこで起こる問題か?

 現在、LPガスで指摘されている「無償貸与」や「無償配管」の問題は、その対象とする設備機器や住宅タイプにより、やや問題の性質が異なるものであるため、その概要を整理しておきたい。

 まず、設備機器の観点から分類したものが図1である。ガスメーターより内側(需要側)にある設備機器が「消費設備」と呼ばれ、ガスコンロ・給湯器等のほか、住宅内にある「消費配管」も消費設備に含まれる。また後述のとおり、エアコンやWi-Fi機器など、ガス以外の電気機器も「無償貸与」の対象となる。

図1.ガス等の設備機器からの分類 出典:TOKAIホールディングス

 次に、住宅のタイプで分類すると、集合住宅か戸建住宅かで大分類され、さらに集合住宅は賃貸か分譲か、戸建住宅は注文か分譲(建売)かで分類される。現実にはさらに細かな分類が可能であるが、本稿では4区分にとどめることとする。WGでは、これら4区分のうち、主に「賃貸集合住宅」と「分譲戸建住宅」におけるLPガスの商慣行を取り上げているが、WG事務局資料では、必ずしも明確に区分されていないように思われる。

 以上、設備機器と住宅タイプの2つの軸によって、LPガス商慣行の問題を整理したものが表1である。赤色で着色したセルは、WGで主に議論されている問題であり、黄色で着色したセルは、潜在的に同じ問題を抱えるものである。「賃貸集合住宅」や「分譲戸建住宅」における「無償貸与」や「無償配管」は、消費者からLPガス事業者の選択の自由を奪うという点で共通の問題を抱えている。

表1.LPガスの商慣行問題の分類図 出典:筆者作成

 なお表1では、注文戸建住宅などを空白(無色)としているが、「不当な勧誘」など別の問題を抱えていることに留意願いたい。逆に言えば、「不当な勧誘」とは、自由にLPガス事業者を変更可能な注文戸建住宅だからこそ生じる問題であり、注文戸建住宅以外ではほとんど生じないタイプの問題であると言える。

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